「こんなむごい死に方してはならない」の思いから68年…活動記録など2万点ネット公開へ
読売新聞 / 2024年12月5日 5時0分
ノーモア・ヒバクシャ~被団協に平和賞
被爆者団体の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」が歩んだ68年間の資料を整理し、継承する取り組みが進んでいる。その担い手は、NPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」(東京)。被団協のノーベル平和賞受賞決定を機に加速させ、活動記録など約2万点に及ぶ資料のオンラインでの公開を目指す。(広島総局 小松大騎)
さいたま市のビル2階にある継承する会の資料庫には、書籍や冊子、資料が詰められた箱などが所狭しと並ぶ。資料管理を担当している栗原淑江さん(77)は「原爆で人生が暗転した後、苦しんだり喜んだりしながら歩んできた被爆者の歴史が詰まっている」と語る。
継承する会は2011年、作家の故・大江健三郎さんや被団協代表委員を務めた故・岩佐幹三さんらが呼びかけ人となり、被団協の資料保存を主な目的として設立された。現在、400以上の個人・団体が加入している。
岩佐さんは16歳の時に広島市内の自宅で被爆し、母を失い、妹も行方不明のまま見つからなかった。その経験から「人間がこんなむごい死に方をしてはならない」と、亡くなった人の記録を残す大切さを訴え続けた。1980年に被団協の事務局員になった栗原さんは、岩佐さんの思いに共感し、継承する会に加わった。
継承する会では、被団協が56年に結成されて以降の膨大な資料を、▽被爆者運動史▽海外での運動▽裁判資料――などに分類し、整理を進めた。「被爆者運動史」には被団協の結成宣言、「海外での運動」には代表委員だった故・山口仙二さんが82年に国連本部で「ノーモア・ヒバクシャ」と訴えた演説原稿の写しなどが含まれる。栗原さんが被爆者から集めた延べ800編もの「自分史」も加えられている。
今後は、多くの人に資料を目にしてもらおうと取り組んでいる。一部はデジタル化し、被団協が過去に国連本部で開いた「原爆展」のパネルをまとめた特設サイトを昨夏に開設。今年8月には被爆者の体験記集23冊をネット上で公開した。残る多くの資料もオンラインで閲覧できるようにする考えだ。
継承する会は資料の収集や発信の拠点「継承センター」を首都圏に設立する構想を打ち出しており、資金の寄付を募っている。6億円を目標としているものの、現在は約1000万円にとどまっている。
栗原さんは被団協代表団の一員として、10日にノルウェーで開かれる授賞式に参加する。被団協の草創期から活動した約130人の顔写真を並べたパネルを持参する予定だ。「多くの被爆者が被団協の運動を支えてきた『歴史』の重みを世界中の人に感じてほしい」と語った。
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