相次ぐ鉄道運賃の値上げ、地方にも動き広がる…JR東日本は平均7・1%の引き上げ申請
読売新聞 / 2024年12月7日 5時0分
鉄道会社の運賃値上げが相次いでいる。JR東日本は6日、全エリアの運賃を2026年3月に平均7・1%引き上げることを国土交通省に申請したと発表した。鉄道会社では物価高に伴い、電気代や保守管理にかかる資機材費、人件費の負担が増しており、地方にも値上げの動きが広がっている。(鈴木瑠偉)
増収目的の値上げは民営化後初めて
「値上げは心苦しいが、安全に鉄道を運行するには、労力とお金をかけないといけない」
JR東の渡利千春副社長は6日、東京都内での記者会見で、値上げの理由を説明した。
切符の初乗り運賃は10円引き上げられ、山手線は150円から160円になる。このほか、東京―新宿は210円から260円に、東京―横浜は490円から530円になる。首都圏の一部路線で私鉄との競合上、安く抑えられていた運賃体系も見直す。このため都心部の路線の値上げ幅は大きくなる。
JR東は26~28年度の3年間の平均で年間881億円の増収を見込む。コスト増への対応だけでなく、東京駅と羽田空港をつなげる新線の整備や、大規模地震への備えも進める。これまではバリアフリー化や消費税の導入・引き上げに伴って値上げしてきたが、増収を目的とした値上げは1987年の国鉄民営化以来、初めてとなる。
値上げが相次ぐ背景に「総括原価」算定ルール見直し
JR九州は、2025年4月に全体で平均15%引き上げる。初乗り運賃は現行の170円から200円となる。京阪電気鉄道は、25年10月からの値上げを国交省に申請した。西武鉄道も26年春に値上げする方針を明らかにしている。
値上げが相次ぐ背景には、今年4月の制度改正もある。鉄道各社は運賃について、経費に適正な利益を上乗せした「総括原価」を基に算出し、国交省に申請する。国交省は、総括原価の算定ルールを見直し、脱炭素や安全対策への投資、人件費、災害からの復旧といったコストを運賃に反映しやすい仕組みに改めた。このため各社は値上げを申請しやすくなった。
設備の老朽化深刻、費用かさむ見込み
鉄道各社の値上げは今後も続く可能性がある。
国交省によると、鉄道会社が管理する橋は建設から平均で56年経過しており、一部では老朽化が深刻になっている。各社はコロナ禍に伴う経営環境の悪化で修繕費などを抑制してきたため、今後は費用がかさむ見込みだ。
ただ、運賃を値上げすれば利用客が減少し、運輸収入の増加につながらない可能性もある。移動の足として欠かせない鉄道を長期的に維持するため、鉄道各社は運賃と収支のバランスを慎重に検討することが求められている。
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