日本の酪農家、1万戸割れの危機...酪農家83.1%が「経営環境」悪い 中央酪農会議調査
J-CAST会社ウォッチ / 2024年12月9日 21時15分
一般社団法人中央酪農会議(東京都千代田区)は2024年12月2日、指定生乳生産者団体が生産販売を受託する酪農家の戸数を集計したところ、2024年10月に初めて1万戸を割る9960戸となったと発表した。
また、酪農業を営む酪農家236人を対象に、経営状況に関する緊急調査を行うと、酪農家の6割が赤字で、8割が経営環境の悪さを感じている結果が出た。中央酪農会議は「日本の酪農は生産基盤の危機を迎えています」と指摘する。
経営環境に悪影響を与えている要因 「円安」91.8%、「原油高」68.4%
調査では、指定団体で受託している農家戸数を集計した。すると、2019年4月の1万3384戸から減少を続け、2024年10月時点で1万戸を割り込み、9960戸となった。前年同月比増減率では、ピークが23年4月で7.3%の減少、24年10月は5.7%の減少だった。
全国の酪農家236人を対象にした経営状況に関する調査では、「酪農経営の環境は良いと思うか?」の質問には「とても悪い」50.0%、「まあ悪い」33.1%で、合計83.1%が経営環境の悪さを実感。一方、「とても良い」0.0%、「まあ良い」は5.1%、「どちらでもない」は11.0%だった。
経営環境に悪影響を与えている要因を聞くと(複数回答可)、「円安」91.8%、「原油高」68.4%、「ウクライナ情勢」67.9%、「インフレ」38.8%、「人出不足」36.7%という結果になった。
98.7%「生産コストが上昇」、96.2%「収入が減少」
また、生産コストと収入の変化について聞いた。その結果、酪農家の98.7%が「上昇している生産コスト」がある、96.2%が「減少している収入」があると回答した。
上昇を感じる生産コスト(複数回答可)では、「濃厚飼料費(配合飼料等)」94.4%、「農機具費」86.7%、「光熱水料・動力費」81.1%だった。減少を感じる収入では、「牛販売の収入」が95.2%、「生乳販売の収入」が30.4%などが上がった。
次いで、24年9月の牧場の経営状況について聞いた。それによると、「赤字」は58.9%、「黒字」は26.7%という厳しい結果に。離農を考えることがあるか質問すると、「よくある」18.6%、「まあある」29.2%で、離農を検討した酪農家は47.8%となる。一方、「あまりない」26.3%、「まったくない」21.2%、「わからない」4.7%だった。
酪農家からは次のようなコメントが寄せられた。
「牛乳を生産するためにかかってきているコストが大幅に上がっている事、その為にコスト分を補うためには販売価格が上がってしまうことを理解してもらいたい」
「赤字でも世の中のために生乳生産していることを理解してほしい」
「いろいろ工夫していますが経営厳しいです。牛乳を飲んでほしいし、活用してほしい」
北海道大学大学院・農学研究院准教授の小林国之氏は、「酪農危機は複数の要因」があるとしたうえで、
「穀物や資材価格の高止まりなどの要因は、ニューノーマルになると想定されます。つまり、高コスト時代の酪農経営のあり方への転換が、今求められているといえるでしょう」
「こうした転換はすぐにはできません。農業の中でも特に酪農は転換に時間が必要です」「短期間で構造を変えることが難しいのが酪農経営ですので、中期的なビジョンをもって取り組みを進めていく必要があります」
と指摘している。
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