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京都市バス運転士たりなくて「非常事態宣言」…休暇取得率や「年収1000万」アピールし募集

読売新聞 / 2024年12月11日 15時12分

 京都市バスの運転士が足りない。市交通局は「市バス運転士不足 非常事態宣言」を発出して、今秋、新たに採用活動を始めた。その成果やいかに――。(相間美菜子)

 運転士不足の背景の一つには、「2024年問題」がある。今年4月から、長時間労働を是正する働き方改革関連法が施行され、運転士にも時間外労働の上限規制が適用された。

 交通局では、現行ダイヤの運行を維持するのに計880人の運転士が必要だが、9月1日時点で約50人が不足している。加えて、来年度以降、定年退職などで毎年約50人が減っていく。

 手をこまねいているわけにはいかない。交通局は7月下旬から1か月、新規採用者70人を募集した。しかし応募は47人。危機感を抱いた交通局は9月末、非常事態を宣言するに至った。

 <このまま人員不足が続けば市バスの現行の路線・ダイヤを維持することが難しくなることから、ここに「市バス運転士不足 非常事態宣言」を発出します>

 市バスの運行維持は市民生活に直結する重大事なだけに、宣言は賛否を呼んだ。市議会の産業交通水道委員会では「宣言すれば今の状況を打開できると本当に考えているのか」(市議)などの厳しい意見も。将来的に減便する地ならしなのでは、と受け取る市議もいた。

 宣言の真意を、北村信幸・交通局長は「決して宣言はバスの減便ありきのものではない。まずは交通局の現状や経営状況を知ってもらいたい」と説明する。交通局は宣言を発出するとすぐ、“ここが天王山”とばかりに、緊急措置として70人以上の職員の募集を始めた。

 夏の採用時と比べ、処遇改善に取り組んでいる姿勢を前面に押し出した。チラシには「休暇取得率約100%」と記し、働きやすさをアピール。「勤務状況によっては1000万円近い年収も可能」と、頑張りたい人に応えられる給与体系であることも付け加えた。

 その結果、11月までの募集には、定員の倍以上の158人から応募があった。転職希望者が多いといい、担当者は「宣言で多くの人に関心を寄せてもらったことで、家族から勧められた人など、これまでになかった幅広い年代から応募があった」と喜ぶ。

 ただ、運転士不足は今後も続く見込みだ。「自転車操業で厳しい状況には変わりないが、今後も処遇改善などに取り組み、市民生活になくてはならない市バスを守っていきたい」と話した。

観光客対応に負担感も

 週休2日を目指し、営業所の女性専用施設を充実させるなど、交通局は働き方改革に取り組むものの、増え続ける観光客への対応など、労働環境の変化による<しんどさ>はなかなか対処しづらい面がある。

 40代の男性運転士は「約10年前に比べると、倍ほどに月の公休出勤が増えた」と嘆く。代休は取れるものの、臨時便が運行される観光シーズンなどでの負担感は増しているという。「観光客へのきめ細かな対応も求められるため、精神的にもしんどい」と話す。

 男性は「安心・安全・快適に目的地まで届けるというのはやりがいのある仕事。まだ先行きは不透明だが、宣言に期待したい」と願う。

 民営バスでも運転士不足は深刻化しており、減便や廃止を余儀なくされる路線が後を絶たない。

 京都市内全域を走る京都バスは2024年3月末から、約1割減便した。また始発の繰り下げや終発の繰り上げも行った。京阪京都交通でも今秋、緊急措置として減便してきたダイヤを基本とする改定を行うなどした。

 丹後海陸交通(与謝野町)は府北部3市2町で運行する路線バスについて、順次廃止を進めている。10月からは3路線、来年4月からは4路線を廃止する。担当者は「慢性的な運転士不足が原因で、苦渋の決断だった」と話した。

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