災害関連死 高齢化踏まえた支援が必要だ
読売新聞 / 2024年12月11日 5時0分
災害では命拾いしたのに、その後の生活で心身の健康を損ない、命を落とす「災害関連死」は、対策を講じることで減らせるはずだ。社会全体で備えを強化したい。
能登半島地震の発生後、持病の悪化や慣れない避難生活などが原因で亡くなり、災害関連死と認められた人は247人となった。家屋の倒壊や津波など地震の直接的な被害の死者数を超えている。
災害関連死の8割は80歳以上の高齢者だった。他の地域も同様のリスクを抱えている。災害後にお年寄りをいかに守るかは、重い課題と言えるだろう。
能登半島地震を踏まえ、総合的な災害対策を検討してきた政府の有識者会議が報告書をまとめた。避難所の環境を改善することに加え、自宅など避難所以外で生活している被災者についても支援の強化を求めたことが特徴だ。
報告書は、行政全体に「場所(避難所)の支援」から「人(避難者)の支援」へと発想を転換するよう求めたうえで、官民の連携、ボランティア人材の育成を図るべきだと指摘した。
能登では、被災した自宅やビニールハウスなどで過ごす高齢者らに支援が行き届かなかったと言われており、重要な指摘である。
中でも支援の遅れが目立ったのは介護の分野だ。医療支援に携わった医師によると、自宅にとどまっていた体の不自由な高齢者が、長期間入浴できず、体を清潔に保つのが難しくなっているケースが少なくなかったという。
長引く断水や介護サービスの休止で、生活上のケアまでは支援の手が回らなかったのだろう。
だが、衛生状態が不十分では感染症にかかりやすくなる。こうしたことが重なって、災害関連死が増えた可能性もある。
災害時の介護支援を誰がどう担うのかは、大きな課題だ。
各都道府県は、それぞれ介護職員らからなるDWAT(災害派遣福祉チーム)を設けている。
能登には各地からメンバーが派遣され、避難所で支援を行った。今後は自宅などにいる高齢者にも支援を拡大できないか。
災害時には、「福祉避難所」に指定されている高齢者施設などがケアを必要とする避難者を受け入れる。だが、能登の場合は多くの施設が被災したため、そうした役割を十分に果たせなかった。
被災地の福祉避難所が機能しない場合、県外の施設が代わりに役割を担えるよう、平時から取り決めておくことが大切だ。
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