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ノーベル平和賞 被爆者の訴えにどう応えるか

読売新聞 / 2024年12月12日 5時0分

 世界が注目する舞台でヒバクシャ自らが壮絶な体験を語り、核兵器が再び使われようとしている現状に憤りを示した。

 日本をはじめとする国際社会は、悲痛な訴えにどう応え、核廃絶を進められるのか、行動を問われている。

 ノーベル平和賞の授賞式がノルウェーの首都オスロで開かれた。被爆者団体の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」が受賞し、代表として田中熙巳さんが記念講演を行った。

 田中さんは13歳の時に長崎市で被爆した。誰からの手当てもなく苦しむ人々を目撃した体験を紹介し、「戦争といえどもこんな殺し方、傷つけ方をしてはいけないと強く感じた」と語った。

 ウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領が核の脅しを繰り返していることについても言及し、淡々とした口調を保ちながらも「限りない悔しさと憤りを覚える」と訴えた。

 広島、長崎への原爆投下から来年で80年を迎え、被爆者は高齢化が進んでいる。田中さんも92歳で、会場には車いすで入ったが、約20分の演説は立って行い、草稿にはなかった言葉も盛り込んだ。

 核の恐ろしさを知る者として、自分の言葉で核廃絶を訴えねばならないという強い使命感からだろう。演説を終えた田中さんには聴衆から大きな拍手が寄せられ、世界のメディアが中継した。

 被爆の実相を伝えることを通じて、核使用を許さないという国際世論の形成に貢献し、核廃絶を呼びかけてきた地道な活動に光が当たった意義は大きい。改めて敬意を表したい。

 だが、被爆者らの思いとは裏腹に、世界では近年、核兵器が再び使用される危険性がかつてなく高まっている。

 プーチン大統領は、核兵器を使用する条件を緩和した。さらに、核弾頭も搭載可能な新型の中距離弾道ミサイルを、ウクライナ戦線に投入した。

 北朝鮮はロシアに兵士を派遣する見返りに、核・ミサイル技術の提供を得ようとしている。中国は核弾頭を増やし、核戦力の増強を急ピッチで進めている。

 核兵器を二度と使ってはならないという「核のタブー」を改めて確認する必要性がある。

 特に日本は、核の恐怖で自国に有利な状況を作り出そうとする国々に囲まれている。核兵器がもたらす残酷な現実を知る被爆国として、各国と連携し、核保有国に自制を促さねばならない。

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