天才2人の頂上決戦、藤井聡太竜王が「秘策」繰り返す佐々木勇気八段を「急所の一撃」で下す
読売新聞 / 2024年12月12日 20時1分
将棋界で「天才」と称される2人による頂上決戦は、藤井聡太竜王(22)が4連覇で幕を閉じた。鹿児島県指宿市で11、12日に行われた第37期竜王戦七番勝負第6局で、藤井竜王は苦しみながらも精度の高い指し手を重ね、佐々木勇気八段(30)の挑戦を退けた。
12日午後3時21分、佐々木八段が、鹿児島湾に面した対局室の窓外にいったん目をやった後、駒台に手を伸ばして「負けました」と頭を下げた。対局室に集まった報道陣に囲まれ、藤井竜王は「対応力を磨かなければいけないと思った。課題が残るところがあった」とシリーズを振り返った。
両者のプロ入りは、藤井竜王が14歳2か月の史上最年少だったのに対し、佐々木八段も16歳1か月と史上6番目に若い。幼少期から天才と呼ばれた2人が相まみえたのが今期七番勝負だった。今回がタイトル戦初挑戦の佐々木八段は、他棋戦での戦績が落ちるほど藤井竜王対策に研究時間をつぎ込み、趣向を凝らした秘策をぶつけてきた。
第3局では、序盤に飛車を横へ動かして活用する「振り飛車」戦法に意表をつかれた藤井竜王が、追い詰められたものの、一瞬の隙をついて逆転勝ち。続く第4局では、早々に角を交換する「角換わり」から新構想で主導権を奪われた末に敗れ、2勝2敗のタイに持ち込まれた。
第1局を除き、毎局のように序中盤で挑戦者ペースの場面があり、多くの時間を先に使わされる展開になった。それでも、藤井竜王は泰然自若とした態度を崩さず、佐々木八段の作戦を受け止めた。逆境でも愚直に最善手を探し求め、挑戦者のミスを誘発した。先手番はすべて勝利し、3勝2敗と4連覇に王手をかけ、後手番の第6局を迎えた。
第6局は序盤から激しく攻める先手の佐々木八段に、優位を築かれそうになったが、藤井竜王は容易に崩れない。1日目の夕方、残り時間で4時間近い差をつけられたが、2時間14分の大長考で指した受けの勝負手△7四歩で挑戦者のペースを狂わせた。2日目に入り、玉砕覚悟の猛攻を仕掛ける佐々木八段に対し、藤井竜王は自玉の安全を確保すると、△1六角と急所の一撃で勝負を決めた。
終局後、藤井竜王は「序盤から様々な工夫をされ、うまく対応できないこともあった。非常に勉強になった」と話し、佐々木八段は「普段指さない形をぶつけているので準備は大変だったが、指しがいはあった」と充実感をにじませた。
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