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ドン・ファン元妻無罪、識者「『疑わしきは罰せず』に忠実な判決」…密売人の「売ったのは氷砂糖」証言など検察不利に

読売新聞 / 2024年12月12日 21時50分

傍聴券を求め、地裁に並ぶ人たち(和歌山市で)

 和歌山県田辺市の資産家で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた会社経営者野崎幸助さん(当時77歳)に覚醒剤を摂取させて殺害したとして、殺人罪などに問われた元妻、須藤早貴被告(28)の裁判員裁判の判決で、和歌山地裁(福島恵子裁判長)は12日、無罪(求刑・無期懲役)を言い渡した。

 野崎さんが死亡した2018年5月以降、和歌山県警の捜査は難航した。

 多数の知人らに聴取を重ね、和歌山地検とも協議。約3年後の21年4月、須藤被告以外の第三者による犯行の可能性を排除できたとして被告を逮捕し、地検が翌5月に起訴した。

 今回のような状況証拠を積み上げる立証での有罪認定については、最高裁が10年、「被告が犯人でなければ合理的に説明できない事実が含まれている必要がある」との基準を示した。

 検察側は今回の公判で28人の証人尋問を実施したほか、被告のネットの閲覧記録などを基に立証。検察幹部は「最高裁判例の基準に達する十分な証拠がある」と自信を見せていた。

 だが公判では、検察側証人が「被告に売ったのは氷砂糖」(覚醒剤の密売人)、「苦い覚醒剤を飲ませると気付かれる」(薬物の専門家)などと検察主張に反する証言をした場面もあった。12日の判決は事件性、犯人性とも否定した。

 甲南大の園田寿名誉教授(刑法)は「裁判員は難しい判断を迫られただろう。苦味がある覚醒剤をどうやって飲ませたのか、検察の主張には疑問が残る。摂取方法を示せなかった以上、『疑わしきは罰せず』という刑事裁判の原則に忠実に従った判決だ」と指摘した。

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