少年院を出院後の自分へ「逃げるな」「人から愛される人に」…入所者が日めくりカレンダーにメッセージ
読売新聞 / 2024年12月13日 15時21分
「逃げるな 目を背けるな」
「周りは変わらない 自分が変わる」
愛知県の瀬戸少年院と愛知少年院に入所する院生が、出院後の自分たちに宛てたメッセージだ。立ち直りを支援するNPO法人の協力で、日めくりカレンダーとして製作が進められている。来年3月、両少年院の院生らに届けられ、更生への決意を日々伝えていく。(小林岳人)
11月中旬、机に向かう5人の院生の姿が瀬戸少年院にあった。1週間ほどかけて考えてきた言葉を真剣な表情で書き出していった。そのそばで、NPO法人「再非行防止サポートセンター愛知」のメンバーたちが、言葉に込めた意味を尋ねたり、表現の方法について助言したりしていた。
カレンダー製作は、10年前から院生や出院者たちの支援に取り組む同センターが、少年院を管轄する名古屋矯正管区などに呼びかけ実現した。自身も少年院に入った経験のある理事長の高坂朝人さん(41)は「少年院での生活はその後の礎になる。毎日カレンダーを見ることで、一日一日を大切に積み重ねる助けにしてほしい」と話す。
カレンダーの言葉は31通り。18日分を両少年院の院生13人が、残りを同センターが関わってきた20歳代の出院者13人が担当する。
言葉からは、それぞれの生い立ちも垣間見える。
「人を愛して人から愛される人になってほしい」
ある院生は、「複雑な環境で育った」と説明する。少年院で読んだ本で、非行に走る若者に自分と似た境遇であることが多いと知ったという。まず人に愛情を注ぐことが重要であるという思いを言葉に込めた。
「大事な人が待ってくれているという状況を当たり前だと思うな!」
別の少年は、面会に訪れたり、出所後に受け入れてくれたりする家族がいることが、決して「当たり前」ではないと周囲の院生を見て知った。この少年は、カレンダー製作を「考えを言葉にすることで、改めて自分と向き合うきっかけになった」と振り返った。
500部を発行するカレンダーの製作費約60万円は、同センターがクラウドファンディングで募った。目標額の達成は、わずか数日だった。寄付者には、普段、少年院と関わりがないと見受けられる人も多く含まれていた。
立ち直りへの期待と活動への理解に対する反響は同センターのメンバーにとっても想像以上だった。「少年院の子たちにも、『君たちは邪魔者扱いされていない』と伝えたい」。顔を紅潮させた高坂さんが語った。
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