茨城県が業務に生成AI導入…1時間かかった翻訳を数分に短縮、資料探しの時間25%削減
読売新聞 / 2024年12月25日 17時19分
人口減少が進む中、限られた職員数で多様化する行政課題に対応するため、茨城県は一部の業務で生成AI(人工知能)の導入を始めた。県の実証実験では職員1人の業務時間は月に平均で約127分の短縮が見込めるとの結果が出たといい、全庁で活用の幅を広げてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する考えだ。(大井雅之)
10月22日、県庁の研修室で職員向けの「DXフォーラム」が開催され、オンラインを含めて幅広い部署から、生成AIに関心がある職員計約60人が参加した。
AIサービスの活用支援を手がけるアイアクト(東京)の西原中也・取締役CTO(最高技術責任者)が講師を務め、生成AIの機能を効果的に使うためのポイントを説明。その後、県情報システム課の担当者が財務会計事務の生成AIサービスを使う上での注意点を確認した。参加した県北農林事務所・畜産振興課の斎藤遼太さん(26)は「畜産関係の業務には様々な法律が絡む。生成AIをうまく活用できれば対応がスムーズになると感じた」と話した。
県は各部局から有志を募ってチームを作り、昨年7~9月に生成AIを業務に活用した場合の有用性を検証した。その結果、業務上のアイデアを出すことや様々な資料で文章の案を作成することなどで特に有効と判明。また、外国語の文章の翻訳では60分以上を費やしていた分量を数分に短縮できたほか、業務上の不明点や疑問を解消するのに要したり、資料を探したりする時間の約25%を削減できるとの試算も出た。
県情報システム課によると、今年6月からは県職員向けのサイトに入力情報が外部に流出しない状態で生成AIを導入。今年度中には財務会計事務と液化石油ガス法関連業務に加えて人事労務関連の業務などで導入を予定しており、今後は県庁のホームページで県民が利用できるサービスにも活用したい考えだ。
一方で、生成AIの活用には情報漏えいや誤情報の拡散、著作権侵害などのリスクもつきまとう。
県は昨年5月、職員向けに生成AIを利用する上での指針を策定。生成AIを利用する場合は目的を明確化し、事前に上司の承認をもらうことを基本姿勢として、機密性の高い情報の取り扱いには細心の注意を払うこととした。また、誤った情報の利用や発信を防ぐことや差別用語や倫理に反する表現が含まれていたり、著作権を侵害したりしていないかを確認することなどを示している。
稲垣健一課長補佐は「生成AIの導入は個人情報保護や倫理的な問題など様々な課題もあるが、適切なルールで運用すれば県民の皆さんにより良い行政サービスを提供できる。今後も音声や画像認識の機能など、さらなる有効活用を図りたい」としている。
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