弾劾訴追案可決 混迷さらに深まる韓国政治
読売新聞 / 2024年12月15日 5時0分
韓国の尹錫悦大統領に対する
訴追案可決によって、尹氏の大統領権限は即時停止された。韓国の権力不在が長期化し、日韓関係はじめアジア情勢に悪影響が及ぶことを懸念する。
尹氏が宣言した非常戒厳をめぐり、韓国の国会に左派系野党が提出した2度目の弾劾訴追案には、野党のほか、保守系与党から8人以上が賛成に回った。
与党は当初、尹氏を早期に辞任させることで事態を収拾するつもりだった。このため、1回目の訴追案の採決をボイコットして不成立に追い込んだが、尹氏が退陣を拒んだことから、与党内にも弾劾やむなしの声が広がった。
尹氏は、なおも復権を目指している。可決後、「決して諦めない」とする談話を発表した。採決に先立つ別の談話では、野党が国政運営を妨害していることを国民に知らせることが非常戒厳の目的だったと弁明している。
だが、国民への周知のために軍を動員するなどという一方的な理屈が、国民の理解を得られるとは到底思えない。権力を乱用し、国内を大混乱に陥れた責任は免れないのではないか。
尹氏は内乱容疑で検察や警察などの捜査対象にもなっている。弾劾審判と捜査が並行して進む異常事態である。
今後は与野党間の対立に加え、与党内や捜査機関同士の主導権争いが激化するだろう。しかし、政治的な駆け引きに終始せず、法に基づいた手続きで民主的に秩序回復を図る努力が求められる。
憲法裁での審判で裁判官9人のうち6人以上が
与党の支持率は、尹氏への対応をめぐって急落している。一方、野党は攻勢を強めている。尹氏が対日関係の改善を進めてきたことについて、野党は「屈辱外交」と批判してきた。
来年は日韓国交正常化60周年の節目を迎えるが、野党の影響力が増せば、日韓関係が再び後退するのは必至だ。北朝鮮の動向にも警戒が欠かせない。
岩屋外相は11日、非常戒厳宣言後、初めて韓国外相と電話会談し、「いかなる状況でも、日韓関係の重要性は変わらない」との認識で一致した。今後も実務者間で意思疎通を続けることが大切だ。
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