アサド政権崩壊1週間、シリアは勢力乱立…「イスラム国」は再拡張狙い不穏な動き
読売新聞 / 2024年12月15日 15時0分
【カイロ=田尾茂樹】シリアのアサド政権崩壊から15日で1週間となる。旧反体制派主導の暫定政権が政権移行に向けて始動したが、将来像は描き切れていない。北部ではトルコが支える旧反体制派と米国が支援するクルド人勢力が衝突し、イスラム過激派組織「イスラム国」の不穏な動きも伝えられる。国内安定化への道のりは険しい。
「革命の勝利を祝おう」。暫定政権の中核組織「シャーム解放機構」(HTS)の指導者アフマド・アッシャラア氏はアサド政権崩壊後初の休日となった13日、SNSでこう呼びかけた。
10日に樹立された暫定政権は政権移行期間を3か月とし、憲法や議会を停止して改憲作業を進めると表明した。将来の統治体制や新指導者の選び方、民主的な改憲手続きなど決めるべき課題は山積している。
暫定政権は「法の支配」や「シリアの宗教・文化の多様性尊重」を強調する。しかし、イスラム過激派と称され、米欧がテロ組織に指定するHTS主導の政権移行には懸念も根強い。少数派が排除される可能性を指摘する声もある。
シリアは様々な勢力が入り乱れ、それぞれを支援する各国の思惑も交錯する。特に政権移行の機会を利用しようとしているのがトルコだ。内戦でシリアから逃れた600万人以上の難民の約半数を受け入れており、負担軽減のため早期帰還につなげたい考えだ。
トルコは、分離独立を目指す同国のクルド人勢力とシリアのクルド人勢力が連携しているとして、シリアへの越境攻撃も繰り返してきた。アサド政権崩壊後には、トルコが支援する旧反体制派「シリア国民軍」(SNA)を通じ、クルド人民兵組織「シリア民主軍」(SDF)への攻勢も強めている。SDFを支える米国の仲介で停戦に合意したとされるが、米政策研究機関「戦争研究所」によると、SNAの攻撃は続き、トルコがクルド人勢力の抑え込みを図っている模様だ。
SDFは米軍の支援で「イスラム国」掃討作戦を主導してきた経緯がある。戦力がそがれることで、シリアの一部を一時支配した「イスラム国」が再び拡張するとの懸念が高まる。アサド政権崩壊後に前政権軍の脱走兵54人が「イスラム国」に殺害されたとの情報もある。12~13日にトルコを訪問したブリンケン米国務長官は、トルコ側に「イスラム国」対策で連携を強化するよう求めた。
一方、アサド前政権を支えたロシアやイランが旧反体制派とどのように向き合うのかも見えないままだ。
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