独VWの苦境 EV戦略の誤算は重い教訓だ
読売新聞 / 2024年12月16日 5時0分
自動車メーカーは、電気自動車(EV)へと移行する戦略を、どう展開していくべきか。
独フォルクスワーゲン(VW)の経営不振は、日本メーカーにとっても重い課題を突きつけていると言えよう。
VWの労働組合は12月に入り、6年ぶりの大規模なストライキを実施した。経営陣が業績の低迷を受け、設立以来初めてとなる国内工場の閉鎖を検討していることに、反発しているためだ。
数万人の人員削減も予想され、独社会をも揺るがしている。
VWの苦境は、EV戦略の誤算によるところが大きいようだ。
VWは、2030年までに世界販売の半数をEVにする戦略を掲げ、巨額の投資を行ってきた。脱炭素を推進する独政府も購入補助金を投じ、後押ししてきた。
しかし、中国政府が自国車を補助金などで支援し、中国勢が基幹部品である蓄電池のサプライチェーン(供給網)も押さえた結果、中国メーカーが圧倒的なコスト競争力を誇るようになった。
VWグループは、世界で年間約920万台を販売し、中国市場が3割以上を占めている。新興の中国勢に後れを取ることは、想定外だったのではないか。
さらには、独政府がEVの購入補助金を昨年12月に打ち切ったことによって購入価格が上昇し、国内でも販売台数が急減した。
EV戦略を展開する上では、各国の事情で普及スピードが異なることを確認するのが大切だ。
中国は国策として推進し、EVの普及が急速に進む。一方、主要先進国では、航続距離の短さや、ガソリン車と比べて割高な価格を理由に販売が鈍化している。
自動車が基幹産業の日本にとっても、VWの不振は重い教訓だ。消費者のニーズを見誤れば、経営に深刻な悪影響が及ぶ。各国の市場動向を
中長期的に見るならば、脱炭素の流れがとどまることはなく、走行時に二酸化炭素(CO2)を排出しないEVへの移行は進まざるを得ない。中国勢の独走を許せば日本経済への打撃は大きい。
対中国などを見据え、ホンダと日産自動車は、全面的なEVの協業を決めた。トヨタ自動車とホンダ、日産は、車に搭載するソフトウェア開発で連携するという。
EVの性能を左右する蓄電池や、自動運転ソフトの開発には巨額の費用がかかる。企業の合従連衡によるコスト削減策が、競争力強化のカギを握るだろう。
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