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「ぐりとぐら」の中川李枝子さんも「ねないこだれだ」のせなけいこさんも亡くなった……子どもの絵本の世界を広げた

読売新聞 / 2024年12月23日 15時30分

10月14日に89歳で亡くなった中川李枝子さん(右)と、同23日に92歳で亡くなったせなけいこさん(左)

 双子の野ネズミが大きな卵でカステラを作る中川李枝子さんの『ぐりとぐら』。夜寝ない子がおばけに連れていかれるせなけいこさんの『ねないこだれだ』。半世紀を超えて愛される絵本や童話を生んだ作家が今年、相次いでこの世を去った。子どもたちが自分の目の高さで楽しめる作品は、戦後の絵本の世界を豊かに広げた。(金巻有美)

 「中川さんの作品は、今も現役中の現役です」

 中川さんが長年理事を務めた「東京子ども図書館」理事長の張替恵子さん(70)は話す。同館は今年、設立50周年を迎えた。この50年間に子どもが借りた本の上位5作のうち、1位と2位、4位に中川さんの「なぞなぞえほん」シリーズが入っている。

 『ぐりとぐら』シリーズは、全22作の累計発行部数が2200万部を超す。『いやいやえん』『ももいろのきりん』などの童話の人気も根強い。「初めて絵本を読む子から1人で読む子まで、中川ワールドは幅広く手厚い」としのぶ。

 福音館書店の編集者時代に絵本『そらいろのたね』を担当したフリー編集者の本多慶子さん(85)によると、「中川さんは物語性、そして言葉の一つひとつをすごく大切にしていた」という。

 本多さんは、累計350万部を超すせなさんのロングセラー絵本『ねないこだれだ』を世に出した編集者でもある。作品に目を留めたきっかけは、切り絵作家で版画家の滝平二郎さん(1921~2009年)の展覧会に行った際、せなさんの手作り絵本が展示されていたことだった。

 後に「いやだいやだの絵本」シリーズとして刊行される『にんじん』は、「ポスターの裏を使って作ったもの」で、『ねないこだれだ』は「たしか『おばけちゃん』とかいうタイトルでした」。ともに旅行も楽しみ、古書店好きのせなさんは海外でも「店に入ったら1時間以上出てこなかった」と懐かしむ。

子ども入り込める「すきま」

 絵本研究家の広松由希子さん(61)は、「中川さんは『本当に面白いものを子どもたちへ』と考え、それを成し遂げた。せなさんは、子育て中に本気で子どもと向き合うお母さんの気持ちが満々とあふれる独自の世界を作った」と語る。妹の山脇(旧姓・大村)百合子さんの絵が彩る中川さんの作品と、「貼り絵」で描かれるせなさんの作品に共通するのは、「(子どもたちが物語に入り込める)すきまがたっぷりあることではないか。技量を見せつけることなく、赤ちゃんや幼児がその世界に入ってくつろいで遊べる絵本を残してくれた」。

 今年は2人のほか、少しわがままだけれど憎めない王さまが主人公の「王さま」シリーズ(寺村輝夫さん作)の挿絵を手がけた和歌山静子さんが亡くなった。「ばばばあちゃんの絵本」シリーズで知られるさとうわきこさんも旅立った。11月に死去した詩人の谷川俊太郎さんは、『もこもこもこ』や『ことばあそびうた』など、斬新な絵本の世界を切り開いたことで知られる。

 広松さんは「日本の絵本史において重要な方たちが相次いでいなくなった。絵本に関わった大人たちが次世代に渡そうとしてくれたものは何か、今一度立ち止まって考えてみたい」としみじみ語る。

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