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アフガンに「秘密美容学校」…タリバン政権の営業禁止下で極秘開校

読売新聞 / 2024年12月17日 7時1分

 イスラム主義勢力タリバン暫定政権が美容院の営業禁止を命じたアフガニスタンの首都カブールで、美容師の訓練校が極秘開校し、少女たちが技術の習得に励んでいる。将来、美容院が解禁されることを期待しながら、秘密の講義が続いている。(カブール 吉形祐司、写真も)

ヒビ割れた鏡

 カブールの某所。塀と鉄扉に閉ざされ、道路から中が見えない敷地の中に、水も電気もない平屋の建物があった。その一室は施錠され、大きなヒビが入った中古の鏡台が隠されていた。

 「きょうは目のメイクの説明です」。集まった生徒から一人を選び、鏡台の前でお手本を見せる講師の話に生徒は熱心に耳を傾けた。

 地元の支援団体が今年8月に開校した訓練校では14~18歳の少女と32歳の女性の計10人が、メイク4か月、ヘアスタイル2か月の半年コースで学ぶ。

国語や数学も

 訓練校は、タリバンが就学を禁止した中学以上の女子たちの地下学校でもある。国語や数学を学び、下級生の先生役も務めた後、毎日午後2~3時の間、美容師の基礎技術を身につける。

 「タリバンが女子教育を禁止し、学校に通えなくなったから家にいるしかなかった」。こう語る講師の年齢は17歳。美容院で働きながら技術を学んだ経験があり、他の少女たちの指導にあたる。コースが終了すれば、地下営業をする美容院に就職できる可能性がある。

 講師の少女は「信用できる人と接触して美容院を紹介してもらう」と地下美容院とのパイプの重要性を強調する。支援団体の男性は「美容院が禁止されても結婚式はあるし、女性は普段からおしゃれもしたい。需要はある」と話す。

 悩みは訓練に使う化粧品などの費用の捻出だ。鏡台は中古が1台だけ。ファンデーションは日本円で1000円前後で、結婚式で使うブランド品は約5500円と高額だ。現在は中東のある国の政府による援助などでまかなっているという。

結婚式で

 危険を冒して美容師を目指す理由について、少女たちは「収入のため」と口をそろえる。タリバンが女性の就業機会も制限する中、美容師の報酬は格段に高い。

 支援団体によると、女性の平均的な月収は日本円で2万~2万6000円。一方、美容師は1回のメイクで2200円、ヘアスタイルも整えれば6500円の収入になり、結婚式の花嫁のメイクはその10倍だという。平均月収以上の額を1度の結婚式で稼げる計算だ。

 18歳の少女は「ここで学んでいるのは家族だけの秘密。誰にも話さない」と話す。家族は心配しつつ、応援もしてくれるという。16歳の少女は「政府の方針も将来は変わると思う。変わらなければ、地下営業で働くだけ」と口を結んだ。

 ◆美容院の営業禁止=タリバン暫定政権の「勧善懲悪省」が2023年7月25日、イスラム法に反するとして全国で実施した。業界団体によると、約1万2000店で主に女性の経営者と従業員が職を失ったとみられる。監視の目をかいくぐり、地下営業をする美容院も多いとされる。

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