「投高打低」打破へ…「アイピッチ」や大谷も使用の最新マシン導入、「打撃検定」で地力アップ
読売新聞 / 2024年12月22日 18時30分
[球景2024 投高打低]<中>
プロ野球では近年、科学的なアプローチによる投手の進化が著しい。今季も一層、顕著となった「投高打低」の背景と、現状打破を試みる打者側の取り組みを追った。
元首位打者が考案
左翼線へ高々と上がった打球が、切れることなくポールの内側に飛び込んだ。「完璧。理想の打撃ができた」。ソフトバンクの石塚にプロ1号が飛び出したのは、8月21日の仙台での楽天戦。育成ドラフトで入団して5年目の右打者は7月下旬に支配下選手登録されたばかりで、一軍デビューから4試合目で記念のアーチを描いた。
成長の裏には球団が今年2月に主にファームの選手向けに導入した「打撃検定」があった。球速や回転数、球の軌道といったデータを入力すれば、その通りに投球できるマシン「アイピッチ」を用い、専用のウレタンボールを打ち返す打球の速度や方向などのデータを計測して打者の打撃能力を測る取り組みだ。
実戦での打球速度に応じて「中長距離打者」と「アベレージ打者」に分け、それぞれに合格基準を設けた。検定レベルは16段階で、135キロの直球を捉える確率を測るレベル1からスタート。レベル16は一軍の主力級を想定し、150キロの直球やスライダー、チェンジアップ、カーブなどを織り交ぜるアイピッチから10打数3安打以上で合格となる。今季は石塚を含めた若手3人がレベル16をクリアした。
考案者の一人が、2013年パ・リーグ首位打者で、現在はデータサイエンス部門に籍を置く長谷川勇也さんだ。検定では打球データにプロの目を加味して「安打」を認定。「日本のトップレベルの守備を想定し、ハードルを高くしている。これを乗り越えないと一軍で結果は出ないよ、という基準は作れている」と語る。
アイピッチを打ち込んできた石塚は、選球眼の向上やミートポイントの広がりに手応えを深めた。練習で打つ1球の質が実戦に近づくことで「試合でしか分からず、試合でしか直せない」と感じていた課題を短い時間で克服できた。だからこそ、「一軍の打席でも、これは絶対に無理だと思うボールはなかった」と言い切る。
高額機器で投手の進化に対抗
アイピッチをしのぐ高性能マシンを導入する動きもある。大リーグで普及し、ドジャースの大谷も活用している「トラジェクトアーク」を巨人やソフトバンク、楽天が導入している。
リース料金が3年間で約1億円という最新機器は、マシンの前面にあるスクリーンに投手の等身大の映像が映し出され、本物と同じ高さや角度のリリースポイントに調整された可動式の発射口からボールが飛び出してくる。データがあれば、個別投手の球速や回転、変化球の曲がり幅を再現できるという。
巨人は今季途中に東京ドームの一塁側ベンチ裏に設置した。初対戦となる投手などの球筋の確認に利用していた丸は「対戦相手のイメージがわかないことは、なくなった」と歓迎する。シーズンが進む中で各投手の球質の変化も反映させられるといい、「参考になる部分が多い。プラスはあってもマイナスはない」と語った。
ソフトバンクでは導入1年目の今季、他球団の100投手以上のデータを入力。今後は腕の振りの違いを再現するため、球種ごとに映像を切り替えたり、左右の打席から見た角度の映像を準備したりして、リアリティーを追求する。資金を投じ、手間もかけ、投手の進化に対抗していく。
フライボール見直しも
大リーグではゴロを避けて飛球を打つ「フライボール革命」がはやり、打球に角度をつけて長打を狙う打者が増えた。しかし、誰もが大谷(ドジャース)のように本塁打を量産できるわけではない。
体格やパワー、スイングスピードは人それぞれ。巨人の阿部監督は「力のない選手がフライボールをやっても限度がある。日本球界もそうなろうとしていた。だからじゃないか、『打低』なのは」とみる。
長岡「横振り」で覚醒
ヤクルトの長岡は打ち方を見直して成功した一人だ。昨季までは強い打球を右翼方向へ引っ張る意識が強く、「ボールに振り負けないように」と打球に角度をつけるスイングもイメージしていた。しかし、1メートル75、82キロの左打者にとって、あおり打ちするようなフォームで投手方向の右肩が早く開いてしまうことにつながり、打率はリーグ最下位の2割2分7厘に低迷。「これじゃ打てないと思った」
今季、習得に取り組んだのは「横振り」だ。肩のラインとバットを平行に出すレベルスイングを意識することで、ボールに当たるバットの面を長くキープできるようになり、追い込まれてもしぶとく中堅から反対方向へ鋭い打球を飛ばせるようになったという。
打率はリーグ6位の2割8分8厘まで伸ばし、初タイトルとなる最多安打にも輝いた。更なるレベルアップを誓い、「3割を目指していかないと」と話す。
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