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「小説を書いてみたい」小泉今日子さん、心に留め実践する後輩女優の「いつも違う道」

読売新聞 / 2024年12月18日 15時41分

本との関わりについて語る小泉今日子さん(11月26日、札幌市中央区で)=古厩正樹撮影

 歌手、俳優、プロデューサーとして活躍する小泉今日子さん(58)の講演会「小泉今日子トークライブ」(読売新聞北海道支社主催)が11月26日、札幌市中央区の共済ホールで開かれた。読売新聞の書評欄「本よみうり堂」で2005年から10年間、読書委員を務めていた小泉さんが、人や本との「出会い」、歌や舞台などに対する思いを語った。来場者らから好評だった小泉さんのトークを詳報する。

「小泉今日子トークライブ」詳報<2>

〈第1部「私が出会った人~時が過ぎて今~」の後半では、小泉さんが、尊敬する俳優や、書評を通じて広げていった新たな活動について語った。小泉さんには、「恩師」と慕う演出家 久世光彦くぜてるひこ さん(2006年死去)の言葉と同じように、心に留めている後輩女優の言葉があるという〉

 私が手がけた舞台を、満島ひかりさんが見に来てくださった時、出演した若い男性俳優が満島さんに「僕のお芝居どうですか。もっと良くなるためには何をすればいいですか」って聞いたんです。そうしたら満島さんは、「この劇場に来るときに、いつも違う道を通ればいいよ」って答えたんです。満島さんは後輩ですけれど、やっぱりすごいなって尊敬しました。

 私は、満島さんの隣でたまたま聞いた言葉を、ずっと実践しています。劇場に向かうとき、前の日と違う道を歩くと、民家の庭先の花、風に揺れる洗濯物、気づかなかったものが「すてきだな」と思えて、着くと、自分の感受性みたいなものがふわっと広がっているような状態で、お芝居が始められる気になるんです。

〈書評をきっかけに、あこがれた俳優もいる〉

 私が書評を書いた2冊目が、「沢村貞子という人」という本でした。山崎洋子さんという、沢村さんのマネジャーをされていた方が、思い出を書いた本です。書評をして改めて、沢村さんの随筆などをたくさん読み、とてもあこがれたんですね。すてきな格好いい人で。私の印象では、沢村さんはちょっとクールで意地悪な役が多かったんですけど、実はとても温かい人。それで、他の女優さんの随筆も読んでみようと高峰秀子さんの本を読むと、そこに沢村さんが出てくる。また時を経て黒柳徹子さんの随筆を読んでいたら、黒柳さんも沢村さんと親しかった。「ほら、自分の好きな人がみんなつながってる」みたいな、そういう喜びがありました。

 本って、「わらしべ長者」みたいに1冊読むとまた他の本、また他の本……と読みたくなって、それがつながって、自分の中で一つの物語になっていく。そういうのが、本を読んでいてとても楽しいことだったりします。

〈読書委員の経験を経て、本に関わる仕事も増えた〉

 ポッドキャストで「ホントのコイズミさん」という番組をやりました。本屋さんや、本に関わる仕事をしている方、作家の方たちにお会いして、なぜそういうお仕事をやっているのかということを聞いてみようと思って、コロナ禍の頃に始めました。本屋さんがどんどん減っているようだと聞きますが、逆に「独立系」の小さな本屋さんは増えているんじゃないかと思って。

 そういう本屋さんをのぞいてみると、コンセプトがしっかりしていて、例えば、韓国の文学しか扱っていないとか、写真集だけとか、本を売るだけじゃなくてカフェを作ってみんなが読むスペースを設けている古書店もありました。様々な独立系の本屋さんが強い思いを持っています。

 そのエピソードを、例えば、生きづらさを感じている人が聞くと「あ、こんなふうに考えている人は自分だけじゃないんだ」と少し楽になるんじゃないかと思って始めた番組でした。今はもう終わってしまいましたが、アーカイブは全部聞けます。

〈小泉さんは2022年にデビュー40周年を迎え、歌手として31年ぶりに全国ホールツアーを開催した〉

 コロナ禍の前は、「私なんかが歌っても」みたいな消極的な気持ちだったんです。でも、ステイホームの時に家で悶々もんもんとしていて、「もしかしたら、悶々としたり不安に思っているのは私だけじゃなくて、世の中のほとんどの人がそうなんじゃないか」と思って。そして、「今、私が歌うことで、青春時代に私の歌を聴いてくれた人を1人、2人、3人と元気にできたらいいな」というので、(コロナ禍の時に)配信ライブというのから始めました。22年にホールツアーで全国を回らせてもらい、今年で3年目になります。私は今58歳ですが、60歳の還暦までは歌い続けようと思っています。

〈最後に、最近好きな本、還暦を過ぎてからの「夢」について語った〉

 10年間読書委員をして、「書くために読む」のは意外と苦痛だったようで、しばらく本を読むのが嫌になっていました。でも最近少しずつ、読む習慣が戻ってきています。今は、韓国の小説や詩とかが、なんというか、力強くて好きですね。絶望を絶望のまま、まっすぐ見つめて物語を作ったりするので、それが心にぐっとくる、みたいなところがあります。

 私の60歳を過ぎてからの夢を一つ語るとすると、本がいっぱい積んである部屋に3か月ぐらい軟禁されて、本を読むしかないっていう環境に置かれたい。そんなお休みが欲しいと思っています。そして、小説を1冊書いてみたいなって思っています。いつになるか分からないですけども、楽しみに待っていてください。

 (小泉今日子さん「逆差別をしないでくださいね」…アイドルだった私は「この程度やれば十分」と言われてきたに続く)

◆こいずみ・きょうこ=1966年生まれ。82年にデビューし、歌手、俳優としてテレビ、映画、舞台、CMなどで活躍。2015年、自身が代表を務める「株式会社明後日(あさって)」を設立し、映画、舞台などのプロデュースも手がける。

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