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大谷やダル支えたコーチ「データと野球」語る…150キロ以上の投球、10年で3・5倍

読売新聞 / 2024年12月23日 16時45分

[球景2024 投高打低]<下>

 プロ野球では近年、科学的なアプローチによる投手の進化が著しい。今季も一層、顕著となった「投高打低」の背景と、現状打破を試みる打者側の取り組みを追った。

オリックスの3連覇に貢献

 トレーナー、コーチとして、日米球界を20年以上渡り歩き、卓越した育成手腕を発揮した前オリックス巡回ヘッドコーチの中垣征一郎氏(54)に投手の球速アップの背景や、データ科学が普及する中で選手や指導者らはどう向き合っていくべきか聞いた。

 ――2021年から4年間、巡回ヘッドコーチを務め、リーグ3連覇にも貢献した。21年入団の宇田川らの潜在能力を引き出すために意識したことは。

 「自分は陸上競技出身で違和感を感じる者も少なくなかったと思うが、選手のパフォーマンスやチーム力をどう向上させるかを考えてきた。例えば、選手の出力を上げる場合、トレーニング科学や運動の原理原則を踏まえ、筋力をつけさせることと並行し、柔軟性の獲得、体の正しい動き方にも取り組ませた。投手、野手として必要な体力全般を上げ、投球や打撃の動作の中にまとめていく。練習メニューを含め、二軍監督やコーチらで出来る限り共有してやってきた」

日本最速は8年間変わらず

 「日本のスポーツ界から世界で通用する選手がこれだけ出ているのは色んな指導者が選手の個性を重んじて育成し、選手の成長に向けて様々な手段から選択できる『自由』が選手に与えられるようになった点が大きい。同時に、才能ある選手でも、成長過程で取り組むべき『当たり前』があると考える。育成方針を考える上で、チームとしての『当たり前』をどこに設定するかは大切なことだ」

 ――投手の球速が上昇を続ける要因をどう考えるか。

 「どのトレーニングだと成果が上がりやすいか、以前より明確になっているのかもしれない。日本人投手全体の能力も確実に上がっていると言える。ただ、大谷翔平選手が日本人最速を更新する165キロを出したのは(日本ハム時代の)8年前。平均値は上がる一方、最速は更新されないままという点も注目すべきだ。大谷選手はあの時点で身体的な要素が素晴らしく、高校やプロに進むに従って厳しいトレーニングをやりきった。出力の最大値において、それだけずぬけた存在であると言えるかもしれない」

 ――ボールの回転数などを計測できる機器を活用した練習が広まっている状況をどう見ているか。

スポーツ科学に正解なし

 「学生時代の恩師に『正解なしのスポーツ科学』と教わってきた。中でも野球は投手と打者が全く異なる運動で勝負することがゲームの起点となるという特殊性がある。その分、色んな要素が入りやすく、カオス(無秩序)にもなりやすい。データ分析による情報が野球にどれだけ影響を及ぼせるか、すごく注目される時代になった。トレーニングや技術分析も同様で、情報量は10年前と全く違う。取捨選択の力が選手にも、コーチやトレーナーなど、パフォーマンスに関わる人にも大事になるのではないか」

 「選手は1ミリ単位、1000分の1秒単位で調整しようとしているわけではない。科学的にそういう分析結果が出ても、動きの調整は人間固有の感覚の中でやること。ほんの少しの違いなのに『もうちょっと』でうまくいかなければ『もっと』というふうに極めてアナログな調整を行う。サイエンスで証明できることとパフォーマンスとの間には、容易には因果関係を見極められないいくつもの要素がある。説明しきれないからこその面白さがスポーツにはあり、知の限界に挑み続けることが醍醐だいご味だと思う」

なかがき・せいいちろう 東京都出身。筑波大卒業後、米ユタ大院留学などを経て2004年、チーフトレーナーとして日本ハム入り。翌年入団したダルビッシュ有(現パドレス)らを支え、12年には米大リーグに挑戦したダルビッシュの専属トレーナーとして1年間サポート。13年に日本ハムに復帰し、この年入団した大谷翔平(現ドジャース)の投打での「二刀流」挑戦をトレーニング・技術面から支えた。17~18年はパドレスの部長職を務め、19年から6年間在籍したオリックスでは育成方針の設定のほか、ファームからの戦力供給を組織的に構築した。

「見える化」球速に貢献 150キロ以上大幅増

 トレーニング技術が進化し、計測機器の普及による「見える化」が進むことで、投手の直球の平均球速が大幅に上がっている。

 データスタジアム社(東京)によると、今季は先発投手が2014年比で5キロ増の145・8キロ、救援投手が同4・9キロ増の148・2キロに達した。ロッテの佐々木を始め、投手の出力が上がり、以前は投げられる投手が限られた150キロ以上のシーズン投球数も大幅に増加。今季は10年前の3・5倍の約3万球に上った。

 中垣氏は、「選手の筋力は以前より上がっていると思う。出力を生み出すために必要な体の柔軟性への意識も(今の選手は)高い」と指摘。その上で、「以前も先天的にそれぞれ持ち合わせる人はいたと思うが、トレーニング次第で後天的に獲得できるようになったことが平均球速アップにつながっているのではないか」と分析している。

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