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独仏の政治混乱 欧州の安定に暗雲が広がる

読売新聞 / 2024年12月19日 5時0分

 ドイツで連立政権が崩壊し、フランスの内閣は総辞職に追い込まれた。欧州の中核である両国が政治的混乱に見舞われ、その影響が、欧州全体に及ぶ事態を懸念する。

 ドイツ連邦議会でショルツ首相に対する信任投票が行われた。信任票は過半数に届かず、否決された。不信任を受けて、来年9月に予定されていた総選挙は2月に前倒しされる。

 2021年に発足したショルツ政権は、ショルツ氏が率いる中道左派の社会民主党など理念の異なる3党が連立を組んできた。

 だが、予算編成を巡る対立で、積極財政派のショルツ氏が、緊縮財政を求める中道右派・自由民主党の財務相を解任した。自民党は連立を離脱し、少数与党体制の政権運営が行き詰まっていた。

 ショルツ氏は総選挙を経て事態打開を図ろうとしている。しかし社民党の支持率は野党に引き離されている。政治の安定を取り戻せるかは予断を許さない。

 一方、フランスではバルニエ内閣への不信任案が国民議会(下院)で可決され、発足から3か月足らずで総辞職に追い込まれた。

 マクロン政権は6月の欧州議会選での与党敗北を受け、起死回生を狙って下院を解散して総選挙に踏み切ったが敗北し、少数与党での政権運営を迫られていた。

 選挙から1年間は下院を解散できず、今後も首相任命と不信任が繰り返される恐れがある。マクロン大統領の求心力がさらに低下するのは避けられないだろう。

 独仏両国に共通するのは、物価高や移民政策への不満を背景に、欧州連合(EU)統合に強く反対する極右勢力や、年金など公的支援の拡充を訴える左派が伸長していることだ。

 ドイツでは移民排斥を主張する右派政党「ドイツのための選択肢」、フランスでは極右の流れをくむ「国民連合」が、次期総選挙や大統領選で躍進することが見込まれている。

 こうした流れが続けば、戦後、欧州が推し進めてきた民主主義や自由などの価値観に基づく社会的統合の機運は失われ、国際秩序に重大な影響を与えかねない。

 しかも、1月には「自国第一主義」を掲げるトランプ米政権が発足する。ウクライナへの支援を縮小し、欧州に国防費増額を求める可能性がある。

 世界の秩序と安定を取り戻すために、独仏が主導するEUの役割は大きい。両国が政治の停滞を早期に脱することを期待する。

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