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千葉・館山湾で人工漁礁を使い藻場再生へ…「磯焼け」改善しCO2の削減も目指す

読売新聞 / 2024年12月24日 0時27分

 館山湾で人工漁礁を使った藻場再生の実証実験が行われている。炭化した下水汚泥を製鉄過程で出る鉄鋼スラグとセメントで固めた漁礁を使用。海藻類を増やすことで二酸化炭素の削減を図り、海藻群の減少とともに魚介類が減る「磯焼け」の改善を目指す。(当間敏雄)

 「ブルーカーボンプロジェクト」と題された実験は、「房州ガス」(館山市)の本間充社長(41)が、北海道や青森県などで藻場再生に取り組む「ジャパンブルーカーボンプロジェクト(JBP)」(東京)に呼びかけて実現した。

 実験では、千葉県館山市西部の波左間漁港と周辺海域の計4か所に、漁礁約200個が投下された。漁礁は30センチ角の三角すい形。素材には炭化汚泥や鉄鋼スラグが使われており、「炭」「鉄」「酸」の3要素から「三位一体」の意味を込め、「トリクル(TRICLE)」と名付けられた。

 素材となる炭化物などは、廃プラスチックや繊維、有機物といった廃棄物の炭化技術を持つ「大木工芸」(滋賀県大津市)が提供した。海藻類が繁茂するには、腐葉土などを由来とするフルボ酸と、鉄分などのミネラル類が不可欠とされる。同社によると、トリクルに使われている炭化物と鉄鋼スラグからフルボ酸とミネラル類がにじみ出ることで、海藻類の生育を促すという。

 大木武彦社長(79)は「将来的には下水汚泥だけでなく廃プラスチックや繊維業界から大量に出る廃棄衣類なども炭化して混ぜ合わせたい」と話す。

 実験は最長5年間を想定している。JBPの吉川京二社長(79)は「脱炭素へ向けて山(森林)のグリーンカーボンと海のブルーカーボンによる循環型社会を作っていかなければならない」と強調。「磯焼けしている地区は漁協単位で全国約2000か所。実証実験が対策の転換点になると確信している」と力を込める。

 房州ガスの本間社長も「漁業者が磯焼けに苦しんでいると聞いている。炭化水素を扱う会社として、脱炭素へ向けてできることは何かを考えた」と話した。

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