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シリアで行方不明15万人、アサド前政権批判で拘束…捜す家族ら「責任の徹底追及を」

読売新聞 / 2024年12月21日 7時13分

 【ダマスカス=田尾茂樹】シリアのアサド前政権下では約15万人が政権批判などによって拘束され、政権崩壊後も行方不明となっている。行方を捜す家族らは一日も早い発見を願い、「前政権の『犯罪行為』の責任を徹底的に追及すべきだ」と訴える。

 首都ダマスカス郊外。丘の上に4階建ての巨大な建物があった。「人間食肉処理場」とも称されるサイドナヤ刑務所だ。旧反体制派が制圧し、11月に4300人いたとされる収容者は解放された。現在は刑務所として機能していないが、政権崩壊から10日ほどたった19日、行方不明者の手がかりを見つけようと家族らが次々に訪れていた。

 2012年に反体制デモに参加して逮捕された夫アブドルカデル・ラズクさん(当時32歳)を捜すマイヤサさんは、内部をくまなく歩き回り、床に散乱した書類の切れ端も拾い集めた。釈放された元収容者を通じ、夫がここで拘束されていたとわかったが、その後の情報はない。マイヤサさんは「責任者全員を裁いてほしい」と声を詰まらせた。

 反体制派の旗を隠し持っていたとして14年に逮捕された兄イブラヒム・アッバスさん(当時56歳)を捜すため、北部ラッカに住むハサンさん(65)は政権崩壊後、連日のように刑務所を訪れている。1年半前に刑務所の医師が生存を確認したといい、「何でもいいから情報がほしい」と語った。

 国際行方不明者機関によると、内戦下のシリアで約15万人が行方不明となった。在英のシリア人権監視団は19日、サイドナヤ刑務所などの収容施設で10万5000人以上が死亡したと明らかにした。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが17年に公表した報告書によると、サイドナヤ刑務所で処刑された収容者は軍事法廷での1~3分程度の「裁判」で死刑を宣告された。激しい拷問の末に絞首刑が執行されたが、裁判なしに処刑された人も多数いた。

 解放された刑務所内は、所々で鼻をつく異臭が漂う。電灯がない5メートル四方程度の雑居房には、数十人以上の収容者が着ていたとみられる衣服が散乱していた。

 処刑後の遺体を運んだ集団埋葬地も次々と明らかになっている。本格調査に乗り出した民間団体「シリア民間防衛隊」によると、少なくとも13か所に上る。

 ダマスカス郊外ナジュハでは、遺体を埋めるために掘られた集団埋葬地の一部とみられる幅1メートル、長さ10メートル、深さ2メートル程度の穴が見つかった。ここだけで数万人が埋葬されたとの見方もあり、旧反体制派などが掘り起こして調べる方針だ。

 中東の衛星テレビ局アル・ジャジーラの19日の報道によると、シリアの暫定政府報道官はインタビューで、アサド前政権下で市民の拘束や拷問に関与した人物を裁く「特別法廷」を設置する考えを明らかにした。

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