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日本拠点のシリア人記者、東日本大震災など取材「悲劇伝える文化は内戦後の母国でも役立つ」

読売新聞 / 2024年12月31日 10時43分

昨年2月の取材で、古里シリアに思いをはせていたエルカシュさん(福島市で)

アサド政権下で拘束された親戚や友人の生存祈る

 シリアのアサド政権が8日に崩壊し、日本を拠点に取材をしてきたシリア人ジャーナリストのナジーブ・エルカシュさん(51)が心境を取材に語った。「生きている間終わらないと思っていた悪夢が終わり、信じられないほどうれしい」とする一方、旧政権下で拘束された親戚や友人の生存の知らせを祈るように待ち望んでいる。

 エルカシュさんはシリア出身で1997年に来日。以来、原爆の取材や、東日本大震災で被災した福島などの取材を続け、日本や韓国など東アジアのニュースをアラブ諸国に伝え続けてきた。

 これまで国民を虐げてきたアサド政権の崩壊をエルカシュさんは歓迎しているが、暫定政権には期待感と警戒感を抱いている。暫定政権の中核を担うのは「シャーム解放機構」で、米欧がテロ組織に指定する。

 エルカシュさんは、暫定政権を担う勢力による政権の固定化の恐れを指摘し、「他国も協力し、シリアに民主政権を根付かせなければならない」と主張した。米政府は暫定政権の政権移行を支持し、穏健姿勢を評価し指導者にかけている懸賞金を取り下げる方針だ。

 旧政権による人権侵害の実態も徐々に明らかになってきた。アサド前政権下で10万人以上が政権批判などで拘束され、大半が行方不明のままだ。首都ダマスカス郊外のサイドナヤ刑務所にいた収容者が解放されたが、人権団体の報告などで、同所などの収容施設での死者数は数万人の規模にも上るとみられている。エルカシュさんは「収容者が見つかったという誤報が流れ、そのたびに家族は本当に苦しんでいる。早く彼らを見つけてほしい」と涙ながらに訴えた。

 今後も日本を拠点にシリアと東アジアを結ぶ活動を続けるという。「震災や戦争から復興し、悲劇を後世に伝える日本の文化が、内戦後のシリアの今後に役立つ。しっかり伝えていきたい」と抱負を語った。

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