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三菱UFJ銀行 職業倫理の劣化が目に余る

読売新聞 / 2024年12月23日 5時0分

 顧客の大切な資産を預かる銀行で、行員が盗みを働くことなどあってはならない。職業倫理の荒廃は深刻である。金融業界の信頼性も根底から問われよう。

 三菱UFJ銀行は、行員が貸金庫から契約者の現金などを盗んでいた問題で16日に初の記者会見を開いた。半沢淳一頭取は「信頼・信用という銀行ビジネスの根幹を揺るがすものだ」と謝罪した。

 問題が発覚したのは10月末である。この40歳代の女性行員は、11月14日付で懲戒解雇された。

 貸金庫は、有価証券や預金通帳、貴重品などを有償で預かるサービスで、銀行への信頼が基盤である。行員が、その資産を盗むなど、信頼を根本から崩壊させる。

 利用者の心配も大きい。問題発覚から会見までに1か月半もかかるなど、説明が遅すぎる。刑事告発の有無を明らかにしないのも疑問だ。顧客の不安に真摯しんしに向き合っているとは到底言えない。

 経営陣は、被害者への補償などの対応を最優先に進めたために対外的な説明が遅れたというが、身内の犯行という重大性に対する認識が甘すぎるのではないか。

 問題の行員は、2020年4月から今年10月にかけ、在籍した東京都内の計3支店で貸金庫から契約者の現金や貴金属を盗んだという。被害者は約60人で被害総額は時価十数億円とみられている。

 行員は、貸金庫の鍵の管理を任され、無断で解錠できる立場にあった。契約者への対応もほぼ1人で行っていたという。あまりにもずさんな管理体制である。

 金融庁は、三菱UFJ銀に報告を求めた。調査を尽くし、厳正に対処してもらいたい。

 金融界では、最近、耳を疑うような犯罪行為が続発している。

 野村証券の元社員は11月に強盗殺人未遂罪などで起訴された。顧客だった高齢の女性宅を訪れ、睡眠薬を飲ませて現金を奪った上、自宅に放火して殺害しようとした罪に問われている。

 三菱UFJ銀と野村証券は、それぞれ業界トップの企業だ。率先して範を示していく立場にある。憂慮すべき事態だ。

 政府は、個人資産の運用を促す政策を推進しているが、これでは国民が安心して金融機関に資産運用を任せることなどできない。

 今年に入って、三井住友信託銀行の管理職によるインサイダー取引や、野村証券での相場操縦なども発覚している。金融業界を挙げて、職業倫理の徹底的な教育を進めていく必要がある。

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