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「犯人という認定は動かない」間接証拠を総合的に判断…妻殺害の元長野県議に懲役19年判決

読売新聞 / 2024年12月24日 9時20分

判決を聞く丸山被告=イラスト・構成 SHINO

 「刑事責任は重く、かなり長期の刑を選択するよりほかない」――。妻を殺害したとして、殺人罪に問われた元長野県議、丸山大輔被告(50)の裁判員裁判の判決で、長野地裁の坂田正史裁判長はこう断罪し、丸山被告に懲役19年(求刑・同20年)を言い渡した。裁判員は、様々な間接証拠を総合的に判断し、「被告が犯人であるという認定は動かない」という結論を導いた。

 今年10月から始まった裁判では、犯行を示す直接的な証拠がない中、丸山被告が犯行を遂げたかどうかの「犯人性」が争点となった。

 判決は、これまで審理されてきた事件当日の被告の行動▽動機▽現場の状況▽事件前後の被告の行動――の順に沿って、それぞれの証拠を評価。「個別に見ると被告が犯人とする決め手にはならないが、それぞれの事実関係が別々の角度から被告が犯人と示している」と評した。

 現場の状況について、判決では足跡が物色したようなものではなく、ごく限られた場所にしか残っていないことなどを「明らかに不自然」と指摘。弁護側が主張する物取り目的の第三者による犯行の可能性を排除し、「被害者が未明に遭遇しても違和感のない人物」による犯行とした。

 丸山被告が事件当日、長野市の議員会館と塩尻市の自宅を往復したかについては、両地点を結ぶルートの6か所の防犯カメラに、丸山被告の車と似た車が映っていたとする検察側の主張について、丸山被告が滞在していたとしている議員会館や現場の近くに設置された防犯カメラ映像は鮮明であり、「被告の車と同一の可能性が高い」とする検察側の証人の専門家の意見を「信用できる」と評価。犯行時間と矛盾することなく、議員会館と現場を往復する丸山被告の車と「かぎりなく同一といえる」車が確認されることは「相当な偶然が重ならなければ生じない事態だ」とし、丸山被告が事件当日に議員会館と現場を往復したことは「純然たる仮説にとどまらない」と指摘した。

 検察側が事件当時、議員会館に滞在することを示すため、アリバイ工作をしたとしている丸山被告の事件前後の行動については、ノートパソコンを起動させたまま操作していないことなどを挙げ「作業をしていたかのように装おうとしたとみてほぼ間違いない」と判断し、意図的な工作と認定。不倫相手の女性との関係再開を望んでいたなどとされる動機も「妻の殺害という極端な行動に結びつかないかもしれないが、場当たり的にそのような考えを思い立ってもおかしくない」と指摘した。

 これらの間接証拠を踏まえ「位置づけや意味合いが判然としない事実関係もあるが被告が犯人という認定は動かない」と結論づけた。

 丸山被告の弁護団は閉廷後、記者会見を開いた。判決の言い渡しを終え丸山被告は「ショックを受けている」とコメントしたといい、弁護団は年内に控訴する方針を明らかにした。

 地裁総務課によると、この日の公判には傍聴券38枚に対して、337人の傍聴希望者が列をなした。

認定基準「評価分かれる」…識者

 元裁判官で法政大の水野智幸教授(刑事法)は、この日の判決について「裁判員は相当難しい判断だっただろう」と指摘する。四つのテーマごとに評価された間接証拠はそれぞれ強弱があり、地裁判決が示すように「単体では評価しにくいものだ」と指摘した。

 判決では、現場に残された足跡と丸山被告がかつて所有していたテニスシューズの靴底が一致するとした検察側の主張に対して「被告のテニスシューズと同一とまでは認められない」と評価するなど、判然としない間接証拠もあった。

 最高裁は2010年の判例で、間接証拠による有罪認定について「被告が犯人でなければ合理的に説明できない事実が含まれていることが必要」との基準を示している。水野教授は、これを引用し、今回の判決について「この基準に沿った場合に評価は分かれるだろう」と指摘。弁護側が控訴の意向を示していることに触れ「控訴審でこのような認定が許容されるかは注目している」としている。

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