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家は無事でも…断水して1年「水が来ないから、集落はバラバラになってしまった」

読売新聞 / 2024年12月25日 5時0分

真浦町への配水管を埋設する予定だった国道(20日、石川県輪島市で)

[能登地震1年]<3>

 土砂で埋まった国道の迂回うかい路を造る槌音つちおとが響く、石川県珠洲市真浦町。大きくえぐられた山肌など、生々しい傷痕が今もあちこちに残る。23世帯42人の住民は皆、町を離れた。多くの家は無事に見えるのに、だ。

 「水が来ないから、集落はバラバラになってしまった」。ここで生まれ育った南逸郎さん(85)がもどかしそうに話す。

 自宅は元日の地震でも棟瓦が少し壊れた程度で、住むには支障ない。しかし、水が出ない。1972年度稼働の清水浄水場は復旧せず、地域一帯は断水して1年になる。

 南さんは、地震後は自宅に残り、約2・5キロ離れた場所へ車で水をくみに行く生活を送っていた。市は清水浄水場の早期復旧を諦め、輪島市から総延長約1・8キロの配水管を真浦町までつなぐ工事を8月に開始。9月末には、水道が復旧するはずだった。

 しかし、工事完了を目前に大雨災害が発生。道路沿いの歩道の下に配水管を埋設する予定だったが、大量の土砂に覆われてしまった。市の担当者は「来年の春までには断水をどうにかしたいが、計画があるわけではない」とする。

 地震以降通行止めだった珠洲市の市街地に向かう国道は、迂回路によって年内にも開通するが、住民の帰還にはつながりそうもない。南さんも大雨災害後に市内の応急仮設住宅に入った。「水道が復旧すれば戻るという住民もいるのだが」と南さん。年明けにも地区の存続について住民同士で話し合う予定という。

        ■

 国土交通省などによると、能登半島地震による断水は県内で最大11万戸。水道管路被害率(水道管1キロ・メートルあたりの被害箇所数の割合)は輪島市1・60、珠洲市1・54で、熊本地震の熊本市の0・03を大きく上回る。

 下水道の被害も深刻で、珠洲市では下水道管の7割が被災した。断水の長期化は衛生面や生活環境の悪化を招き、誤嚥ごえん性肺炎などの災害関連死につながるケースもあった。

 耐震管を使うなど最大規模の地震に耐えうる主要水道管の割合「耐震適合率」は2022年度末、全国平均の42・3%に対し、石川県は37・9%。珠洲市は37%だった。国は28年度までに全国すべてで6割以上とする目標を掲げるが、自治体の財源不足などで工事が進んでいないのが現状だ。

        ■

 そんな中、井戸が注目されている。国は今回の地震を踏まえ、災害時の代替水源として地下水の活用を促すためガイドライン策定に着手した。奥能登では住民同士で民家の井戸を活用した事例があった。

 国交省は過疎地の集落や世帯ごとに独立して水を供給する小規模分散型システムを、来年度から試験的に能登6市町で始める。井戸水や雨水を浄化して使う想定で、水道施設の復旧を待たず水を供給できる。

 大阪公立大の遠藤崇浩教授(環境政策)は「井戸は災害時の水源という視点では有効。公園などに井戸を掘るのも一つの手」とした上で、「まずは国や自治体は水道管の耐震化と、水道管に被害が出た場合に備えて管路の複線化を進めることが必要だ」と指摘する。

 住めるのに住めない――。断水が地域のつながりをも断つことのないよう、国や自治体は複合的な備えが求められる。

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