「企業名+やばい」のナゾ...「ネット上の悪評消します」は怪しいのか?
J-CASTニュース / 2024年12月24日 18時0分
「ネット上の悪評を消さないか」という営業電話が…(写真はイメージ)
先日、記者のもとに東証プライム企業の管理部門に勤めるAさんから、こんな相談があった。
「最近、ネット上の悪評を消さないか、という営業の電話が突然来るようになったんだけど、何か知りませんか? 怪しい気がしてならないんですが」
Aさんによれば、電話は「風評被害対策サービス」を名乗っているという。この背景には、何があるのだろうか。複数の事情通に話を聞いた。
キャリア採用の開始後に電話が急増
詳しい事情は、こうだ。これまで新卒採用一辺倒だったAさんの会社では、今年度から「キャリア(経験者/中途)採用」を開始し、転職サイトに求人が載るようになった。営業電話が相次ぐようになったのは、その後のことである。
「電話の人が言うには、Google検索で当社の名前を入れると、キーワードサジェストや『他の人はこちらも検索』に『やばい』という単語が表示される、というんです」
たとえば、「トヨタ自動車」で検索しようとしただけなのに「トヨタ自動車 やばい」が自動表示されたり、検索結果の末尾に表示されたりする、ということだ(なお、実際にはトヨタ自動車では表示されない)。
さらに電話は、このような状況を放置すると、求人を見た人が社名で検索したときの印象が悪くなるので、対策を打つべきだという。
「そこでGoogleで検索すると『やばい』が出てきてびっくりしました。でも私は、以前からネット上の評判を注意して見ていたので、それが最近になって急に出てきたものだと思うんです」
Aさんが疑っているのは、対策サービスの会社が悪意をもってそのような表示がされるように細工し、同時にサービスの購入を呼びかける「マッチポンプ」のようなことをしているのではないかということだ。
「どうやってそんなことができるかは分かりませんけど、だって、あまりにもタイミングがよすぎますよ。うちの会社の上の方はこういうのほんと気にするし、体面を気にしてお金を出しそうだし。サジェストで『やばい』が出てくれば、みんなクリックするのでますます上位になりますよ、と言われると不安になります」
ポジティブな情報発信で対抗できるか
Aさんは最初、社内のマーケティング部門のBさんに相談したが、Googleの検索結果なんて操作できない、とけんもほろろだった。単に「この会社は大丈夫なのか?」と心配になって検索する人が多いだけだから、それを認めて対策するしかないという。
「でも、仮にGoogleを思うままに操作する方法がないのであれば、対策会社のサービスだってありえないということになりませんか?」
Bさんは考えうる対策として「ポジティブな情報をコンテンツとして発信し、『企業名+評判』で検索してもネガティブ情報が表示されないよう対抗する」方法を提案してくれた。しかしAさんの声は浮かない。
「試しに『社名+やばい』のサジェストのリンクを踏んでみたんですが、実際に当社がやばいと書かれているコンテンツがヒットしないんです。もしそれが実在すれば、Googleに削除申請したり、サイトに法的措置を通告したりするんですが」
これにもBさんは「たぶん過去に『やばい』を含んだコンテンツがあって、それが人気を集めていたのでGoogleもそのワードを評価したのでは? いまはそのコンテンツが取り下げられたか、何らかの理由で非表示になっているのだろう」と指摘するにとどまり、悪意のある工作には懐疑的だ。
一方、IT業界を取材している別のC記者は、以前、風評被害対策サービスの関係者を取材した際に、雑談で「業界内で怪しげなことをやっている会社はないですか?」と尋ねたところ、即座に「ありますね」と返ってきた経験を話してくれた。
「そのときは別件の用事だったのでそれ以上聞けなかったんですが、別れ際に『詳しく知りたかったら質問事項をメールに送ってください』と言われたんです。帰社してすぐに送ったんですが、それっきり返事は来ず、電話で催促したんですがダメでしたね」
ボットやスクリプトを使ってる?
C記者は質問文を作ったついでに、同業の会社を検索し、同内容の取材依頼を各社の問い合わせフォームからメールで送信した。しかし、返事は一件もなかった。
その後、同業のうち一社に勤めていた人と偶然出会い「実際にそのようなことをやっている人が社内にいた」と聞いた。また、本人はやっていないとしながら、具体的な手法についてもこう言われたそうだ。
「一番原始的なやり方として、本人やバイトが『企業名+やばい』で何度も検索する方法だってありますよね。同じように、ボットやスクリプトを使って特定のキーワードを大量に検索させれば、サジェストを操作することは理論上可能です」
とはいえ、Googleはそのような「サジェスト汚染」に対して、以前から厳しい対応をしており、簡単にうまくいくわけではないはずだ。
一方で「ヤバい」という言葉は、削除申請を出しても「詐欺」のように明確な風評と見なされにくい微妙なラインをうまく突いているのでは、という見方もあり、そこまで対策できていないかもしれない、とC記者は推測する。
結局「企業名+やばい」は、Bさんが言うように悪意を持った人によって作られたものとは限らないし、「ネット上の悪評消します」も怪しいサービスとは言い切れない可能性もあるのだが、Aさんは、電話をかけてきた会社がどうなのかは分からない、と思い悩んでいる。
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