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羽田空港衝突事故、運輸安全委員会による経過報告書の要旨

読売新聞 / 2024年12月25日 15時50分

羽田空港ので黒煙を上げて炎上する旅客機(1月2日、羽田空港で)

 東京・羽田空港での航空機衝突事故で、運輸安全委員会が25日に公表した経過報告書の要旨は次の通り。

 本事故は、〈1〉海上保安庁機長・副操縦士が、管制官からの滑走路手前停止位置までの走行指示を滑走路への進入許可と認識し、滑走路に進入・停止したこと〈2〉管制官側が、海保機の滑走路進入・停止を認識していなかったこと〈3〉日本航空機が、滑走路上の海保機を衝突直前まで認識していなかったこと――の3点が重なって発生したと考えられる。

海保機

 〈1〉については、以下の事項と事故との因果関係を分析する必要がある。

 (1)海保機は出発時間の遅れに加え、羽田帰投後の乗組員の帰宅時間を考慮し、出発を急いでいた。

 (2)日航機への着陸許可が出たのは、海保機が滑走路担当管制官との通信周波数に切り替える前で、機長・副操縦士は日航機の存在を知らなかった。

 (3)海保機に、離陸順1番を意味する「ナンバーワン」の指示があった。

 (4)先行する出発機がいたのに海保機が「ナンバーワン」となったのは、震災支援物資輸送を優先してくれたためだと機長が認識した。

 (5)副操縦士による管制指示の復唱(滑走路手前停止位置C5、ナンバーワン、ありがとう)に、機長は「ナンバーワン」「C5」とのみ復唱確認した。

 (6)海保機は、滑走路末端ではなく途中の誘導路C5からの「インターセクション・デパーチャー」を管制指示され、離陸準備を急ぐ必要があった。

 (7)海保機の滑走路進入時に通信士から無線通信が入った。

管制官

 〈2〉については、以下の事項と事故との因果関係を分析する必要がある。

 (1)滑走路担当管制官は、自身の管制下の5機のほか、別の滑走路から離陸予定の2機も目視で監視対象としていた。

 (2)滑走路担当は、海保機が管制指示を正しく復唱し、指示の通りインターセクション・デパーチャーのため誘導路C5へ曲がったことを視認した。

 (3)滑走路担当は、ターミナル空域担当管制官から連絡を受け、外部監視から手元の空港面監視画面に視線を移した。その間に海保機は滑走路に入った。

 (4)衝突の15秒前、滑走路担当は別のターミナル担当から日航機について問い合わせを受け、日航機を監視していた。ターミナル担当は空港面を表示する画面上で海保機が滑走路に入っているように見えたため、日航機のゴー・アラウンド(着陸復行)を想定して問い合わせをした。

 (5)海保機が滑走路手前の停止位置標識を越えた7秒後(午後5時46分20秒)から両機衝突の1秒後(同47分28秒)まで、滑走路占有監視支援機能の注意喚起が発動していたが、滑走路担当はその表示を認識しなかった。

 (6)当時、羽田空港の管制所では、同支援機能の注意喚起が発動した場合の処理要領を定めず、研修カリキュラムに基づく訓練も行われていなかった。

 (7)同支援機能の注意喚起は、(音声ではなく)視覚的なものだった。

日航機

 〈3〉については、以下の事項と事故との因果関係を分析する必要がある。

 (1)発生時、日没後の常用薄明(薄明るい状態)の時刻を過ぎ、月も出ていなかった。

 (2)構造上、後方から見える海保機の外部灯火は、衝突防止灯(白ストロボ)、下部尾灯位置灯(白)、上部尾灯位置灯(白)だった。海保機の停止場所の周囲では、滑走路面の中心線灯(白)と接地帯灯(白)が点灯していた。

 (3)日航機では、社内資格を得るため訓練乗員が右席で操縦し、左席で機長が指導していた。すぐ後ろの席で「セーフティー・パイロット」役の副操縦士が、滑走路や管制官との交信状況などを監視していた。

 (4)機長と訓練乗員は、飛行に関する情報が視野正面に映し出される「ヘッド・アップ・ディスプレー(HUD)」を使っていた。

被害の分析

 被害軽減の観点から、《1》海保機と日航機の衝突・機体損傷《2》日航機による非常脱出《3》消火・救難――の状況分析を今後進める。

 《1》では、今回の衝突は、両機のいずれにとっても、安全性を確保するための設計基準の想定を大幅に超えていた可能性がある。日航機では操縦室と客室に大規模な損壊はなかったが、諸条件が違えば人的被害が拡大していた可能性がある。

 日航機で焼失した機体構造の大半は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の部材だった点などの分析を進める必要がある。

 《2》では、非常脱出の被害低減の観点から、次の事項の分析を進める必要がある。

 (1)日航機パイロットは非常脱出開始前にエンジン停止操作をしたが、右エンジンは作動したままだった。

 (2)脱出で使われた出口はL1、R1、L4の3か所だった。L4担当の客室乗務員は、機長や他の乗務員からL1、R1での脱出開始を知らされないまま、煙の状況が切迫してきたため、自身の判断で外部を確認してドアを開放した。

 (3)脱出開始後も自席付近にとどまる乗客がいた。脱出開始に気付かなかったためで、乗務員による次の指示を待っていた。

 (4)脱出後の乗客の人数確認を現場で行わず、建物内の待機場所へ移動した後、全員を確認した。

 同じく《2》では、以下の事項が、重大な人的被害が発生しなかったことに関与した可能性があり、分析を進める必要がある。

 (1)脱出行動に支障をきたす機体損壊が発生しなかった。

 (2)衝突後に機体が転覆せずに草地で停止した。

 (3)衝突の衝撃で重篤な負傷者が発生しなかった。

 (4)機体の火災が客室内に延焼するまで約10分の時間があった。

 (5)客室乗務員の指示で、乗客が通路や出口に殺到する状況が発生・継続しなかった。

 (6)機内放送が使えない状況で、機長らが機内を移動しながら非常脱出を指示した。

 経過報告で記した事実関係は、安全に関わる情報であるため早期に公表した。多くの航空関係者が、これらの情報に触れ、航空安全の向上に役立てることを期待する。一方、調査は責任を問うために行うものではないことを全ての人に理解してもらうことが重要だ。

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