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サイゼリヤに歓喜した九州・四国…変わるファミレス業界、地図からは各社の生存戦略が見えた

読売新聞 / 2024年12月29日 13時38分

大分県初のサイゼリヤがオープンした大分市のトキハわさだタウン(トキハ提供)

 「あのサイゼリヤに、とうとう行ける」。2024年、九州・四国で歓喜の声が上がった。店舗がなかった県に次々とサイゼリヤが進出したからだ。ファミリーレストランの出店は地域ごとに濃淡があるが、最近はそこに変化が表れはじめた。地図に落とし込むと、ファミレス各社の生き残りをかけた戦略や歴史が見えてきた。(デジタル編集部 瀬戸聡仁)

出店数最強は「ガスト」

 日本でのファミレスは、1970年に東京都府中市で創業した「すかいらーく」を手始めに国内で一気に広まった。外食産業も大きく発展し、市場規模も右肩上がりで成長した。富士経済によると、2023年のファミレス市場は8726億円で、2028年には9800億円超まで拡大する予測という。

 主なファミレスチェーンのホームページに掲載されている店舗数を集計すると、ガストを筆頭に、サイゼリヤ、ジョイフル、ココスと続いている。

各地の最強は?

 各チェーンの店舗数を都道府県ごとにまとめると、人口規模に応じて出店数が多いことがわかる。ただ、それぞれの違いも際立つ。ガストやココスは全都道府県に店舗があるが、ジョイフルは東日本、サイゼリヤは九州に空白域がある。また、ガストとサイゼリヤは首都圏、ココスは北関東で店舗数が多いことも分かる。

 さらに、都道府県ごとに最も多い店で色分けすると、違いは一目瞭然だ。ガストは全国津々浦々にあり、サイゼリヤは主に首都圏に強い。ココスは北関東と北陸に浸透し、ジョイフルは九州・山口で不動の地位を築いている。

創業の地から「ドミナント戦略」

 なぜ濃淡が出るのか。チェーン店研究家の谷頭和希さんは「各社の創業の土地と、ドミナント戦略が関係している」と解説する。

 ガストは、東京都府中市で誕生した「ファミリーレストランすかいらーく」が母体となっており、サイゼリヤは千葉県市川市が創業の地だ。ジョイフルは大分市で生まれ、アメリカがルーツのココスは茨城県土浦市に第1号店ができた。

 谷頭さんは、「各社の創業地を中心に、同じエリアに集中的に出店する『ドミナント戦略』を進めた結果、創業地周辺で強くなる傾向がある」と指摘する。

 ただ、北陸地方でココスが強いのは、有力な地元企業がフランチャイズ契約していることが大きいという。

「めっちゃ行きたかった」サイゼリヤ

 その濃淡に変化が見えたのが2024年だ。サイゼリヤは、これまで店舗がなかった徳島、愛媛県に相次いで出店。12月20日には大分県に初出店した。

 テレビなどでよく見かけるけど行くことがかなわなかった待望のサイゼリヤ出店に、大分県民は喜びで胸を膨らませている。ファミレスはジョイフルとガストにしか行ったことがないという大分市内の高校1年生の男子生徒(16)は、「ユーチューブで見て、『めっちゃ行きたい』と思っていた。出店を聞いて、テンションが上がった」と、興奮している。「年末に行って、食べたいメニューを制覇したい」と意気込んでいる。

 また、「すかいらーくホールディングス(HD)」は10月、北九州発祥のローカルチェーン「資さんうどん」を買収し、全国展開を進めている。12月27日には千葉県八千代市に関東初の店舗がオープン。「丸亀製麺」や「はなまるうどん」など、讃岐うどん系が強かったうどんチェーンに、コシが弱めの福岡のうどんが挑む構図だ。

「個性がないと厳しい」ファミレス

 谷頭さんは現在のファミレス業界について、「個性がないと厳しい時代」とみている。「例えば、ハンバーグ専門の『びっくりドンキー』は業績が好調で、サイゼリヤも、お手軽に楽しめるイタリアンということで根強いファンがいる。ロイヤルホストは比較的高めの価格帯でも、高品質で質の高いサービスで成功している。一方で、突出した特徴がない中価格帯の店は苦戦し、店舗数の減少幅も大きい」と指摘する。すかいらーくHDの資さんうどん買収も、その流れの一環の可能性があるという。

 近年ではコンビニやスーパーも食品事業に力を入れており、コロナ禍では宅配サービスが一気に普及した。「広い業種を見渡さないといけなくなり、ファミレスにとっては厳しい時代だと思う。ユーザーの『ここでいいや』という心理を『ここがいい』に変え、『推し』を増やす企業努力が、生き残るためには必要だ」と谷頭さん。

 コロナ禍を経て、外食に対する考え方や習慣に変化も出ている。酒を伴う食事は回数が減ったという人も多い。谷頭さんは、「コロナ前から皆うすうす感じていた空気感が一気に表面化した」。もともとワインが「ウリ」で、「サイゼ飲み」を意識した駅前での出店を重ねてきたサイゼリヤが車社会の地方や郊外に出店を加速させている理由もここにあるのかもしれない。さらに、物価高のあおりも受けて、外食産業には逆風が吹いている。

 新規顧客を開拓するだけではなく、「推し」てくれるコアなファン層を離さない「守り」も重要かもしれない。

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