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公益通報制度 声上げた人を守らなければ

読売新聞 / 2024年12月26日 5時0分

 勇気を出して組織の不正を告発した人が不利益を被るようでは、誰も声を上げられなくなってしまう。社会の健全な発展のためにも、通報者を守らなければならない。

 公益通報制度の見直しを議論してきた消費者庁の有識者検討会が、公益通報を理由に通報者を解雇したり懲戒処分にしたりした企業などに、刑事罰を科すよう求める報告書をまとめた。

 公益通報者保護法は、通報者への「不利益な取り扱い」を禁じている。だが、現在は罰則がなく、消費者庁の調査では、人事面などで不利益を被る人が少なくないという。その結果、通報したこと自体を後悔している人も目立つ。

 公益通報制度の狙いは、内部に不正があることを企業や団体に気づかせ、自浄作用を発揮させることにある。通報者の解雇や処分といった報復的な対応は、法の趣旨に著しく反している。

 政府は、刑事罰の導入を盛り込んだ公益通報者保護法改正案を来年の国会に提出する。不正を知った人が速やかに通報できるよう、不利益な取り扱いには厳しく対処すべきだ。不当な解雇などの抑止効果も期待できよう。

 公益通報者保護法は、食品偽装や自動車のリコール隠しといった企業の不祥事が相次いだことを受け、2006年に施行された。

 しかし、昨年、保険金の不正請求が発覚した中古車販売大手・旧ビッグモーターでは、公益通報の窓口が社内に整備されていなかった。法の理念が社会に十分浸透しているとは言い難い。

 兵庫県では、斎藤元彦知事によるパワハラ疑惑などを告発した元県幹部を、停職3か月の懲戒処分にした。十分な調査をしないうちに「うそ八百」と決めつけ、通報者の特定を進めた。

 違法性の高い対応だとして、専門家から批判が出ているのは当然だ。現在、県議会百条委員会と弁護士による第三者委員会が調査を進めている。対応の問題点を明らかにすることが重要である。

 一方、通報者側も公益通報と称して意図的に虚偽情報を伝えることがあってはならない。告発された側が多大な迷惑を被るだけでなく、調査に無駄な時間を要し、業務に支障が出かねないためだ。

 法改正にあたっては、こうした点も十分検討する必要がある。

 公益通報に当たるかどうかの判断は難しい。企業や団体が制度を適切に運用できるよう、国は判断基準なども示すべきだ。制度の周知も忘れないでほしい。

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