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「お前じゃ使えない」「税金泥棒」は日常的、電話の半数は「罵声」の部署も…都内42区市町でカスハラ被害

読売新聞 / 2024年12月26日 14時0分

東京都庁

 東京都がカスタマーハラスメントについて都内全62区市町村を対象に行ったアンケート調査で、7割の42区市町が被害を訴えたことがわかった。来年4月に施行される都のカスハラ防止条例は自治体も対象で、都は公務員の被害対策も進める方針だ。(上田惇史)

 調査は今年7~8月、区市町村の人事担当者に対して行った。「職員へのカスハラが発生しているか」の問いには、20区18市4町が「はい」と回答。このうち、誰からのカスハラかを自由記述で答えてもらったところ、「住民」が多く、「契約相手の業者」「議員」もあった。

 カスハラの発生を否定したのは3市5村で、残る3区5市1町3村は「わからない」と回答した。カスハラの実態調査を行ったことがあるのは7区6市1町と全体の2割強にとどまり、都の担当者は「多くの自治体で被害を把握しきれていない可能性がある」とみる。

 カスハラ防止の取り組みを実施しているのは5割強の14区19市2町。具体策として「職員の名札を名字のみに変更」「対応マニュアルを作成」「事例を庁内で共有」などを行っていた。

 一方、取り組む中で困っていることとして、「カスハラの定義づけが難しい」「相手が市民で行政サービスを受ける権利があり、割り切った対応をしづらい」などの意見が上がった。

 今後、カスハラ対策に取り組む予定があるのは7割強の22区19市3町1村に上った。名札変更のほか、ポスター掲示による住民啓発、職員研修、通話録音機の設置などを行うという。

 昭島市は今年3月、市役所本庁舎で、各部署にかかってくる外線電話の録音を始めた。被害の把握や抑止効果を期待する。来年2月からは名札を名字のみに変更する予定で、担当者は取材に対し、「職員をカスハラから守りたい」と話した。

 都は来年2月頃、カスハラ対策の共通マニュアルを作成する。自治体を含め、それぞれの業界でのマニュアル作りを促す考えだ。

「行き場のない怒りぶつけるのはやめてほしい」

 ある区の広聴部署に勤める男性職員(30)は、「区民からかかってくる電話のうち、半分ぐらいは罵声です」と明かす。

 「お前じゃ使えない」「税金泥棒」などと言われるのはざらだ。電話が長時間に及び、お昼休みがつぶれることもあるが、男性職員は「不満を残したままだと、かえって問題が長引く。話を聞き続けるしかない」と諦めの表情で語った。

 多摩地域の自治体で、マイナンバーカードに関わる業務を担当している60歳代の女性職員は、「カードの暗証番号を忘れたので初期化してほしい」と窓口を訪ねてきた50歳代くらいの男性が忘れられない。

 初期化に必要な別の身分証明書の提示を求めたが、男性は持参していなかった。「本日は対応できない」と伝えた直後、男性は「殺すぞ」とすごみ、席を立った。

 マイナンバーカードの手続きは分かりづらいことも多く、窓口を訪ねてきた時点でいら立っている市民もいる。暴言を吐かれることも度々だ。女性職員は「普通に接しているのに、どうしてこんな言葉を言われなければいけないのかと思うこともある。行き場のない怒りをぶつけるのはやめてほしい」と訴えた。

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