日本の支援で整備、ベトナム初の「地下鉄」がホーチミンで開業…定時運行で安全な鉄道システム導入
読売新聞 / 2024年12月26日 7時25分
日本の支援で整備されたベトナム初の「地下鉄」が22日、南部ホーチミン市で開業した。都市化の影響で深刻化する交通渋滞や大気汚染の解消策として、ベトナム政府は都市鉄道の整備を進めている。各国が開発競争に乗り出す中、日本は定時運行で安全な鉄道システムを導入し、「鉄道人材」の育成にも注力していく構えだ。(ホーチミン 竹内駿平、社会部 安田信介)
初の地下鉄となる「都市鉄道(メトロ)1号線」は総延長19・7キロ・メートル。市中心部の「ベンタイン駅」から郊外の「スオイティエン駅」まで14駅を結び、このうち、ベンタイン駅から2・6キロ・メートルが地下区間となる。
22日朝にベンタイン駅で行われた開業式には約500人が参加。一般開放では、多くの市民が終点まで約30分の運行を楽しんだ。
ベトナムでは都市部で渋滞や大気汚染が深刻化しており、都市鉄道の整備はその解決策の一環だ。ホーチミン市では、調査段階から国際協力機構(JICA)が支援し、大手の日本企業が工事やシステム導入などを受注した。定時運行や安全性のほか、騒音や振動を軽減する環境対策も売りだ。
ハノイ市では、フランスや中国が支援した高架式の2路線が開業済みだ。各国が競争を繰り広げる中、日本は「鉄道人材」の育成でもアピールしている。
JICAは2022年から、ベトナムへの鉄道教育支援を始めた。11~12月には、ベトナム鉄道学校の教員や国鉄関係者計10人が来日し、JR東日本大宮総合車両センター(さいたま市)などを視察。1号線の職員向けに教育プログラムを策定した鉄道学校教員のホアン・フイ・トゥオンさん(49)は「教育プログラムの改善に役立てたい」と意気込んだ。
一方、度重なる工期の遅れで、事業費は増大した。JICAが07年3月、ベトナム政府と円借款契約を締結した当初の開業見込みは15年1月で、総事業費は約1266億円。しかし、行政手続きの遅れやコロナ禍などで工期が延長され、総事業費は23年12月時点で約2120億円に膨らんだ。
こうした中、日立製作所は23年4月、ベトナム国際仲裁センターに仲裁を申し立てた。地元紙によると、工事の遅れで費用がかさんだなどとして、市側に4兆ドン(約240億円)を請求しているという。
事業に詳しい政府関係者は「ベトナムの許認可の遅れは顕著で、煩雑な手続きが事業の足かせになっている」と指摘している。
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