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ウルグアイ・ラウンド交渉、コメ輸入の全面受け入れで宮沢首相「選挙に負け続けてしまう」…交渉巡る外交文書公開

読売新聞 / 2024年12月26日 10時0分

1993年7月、東京で開かれたウルグアイ・ラウンドの閣僚会合

 日本政府が1993年の多角的貿易交渉「ウルグアイ・ラウンド」でコメの輸入全面受け入れを避けようと米国に働きかけた詳細なやりとりが、26日に公開された外交文書で明らかになった。当時の宮沢喜一首相がクリントン米大統領に「5年間にわたって選挙に負け続けてしまう」などと伝え、抵抗していた。

 宮沢氏は93年4月16日にワシントンでクリントン氏と会談した際、「(コメの)関税化を受け入れるためには食管法改正を要するが、自民党は参院で少数与党なので改正は実現できない」と伝えた。「関税化」は、関税を払えば自由に輸入できる制度に移行することを指す。日本は当時、コメの輸入を食糧管理法(1995年廃止)で事実上、禁止していた。

 会談に同席した米通商代表部(USTR)のミッキー・カンター代表は「1か国に例外を認めれば、みんな(他国)も例外を求めることになってしまう」としてあくまで例外なき関税化を求めた。

 日本国内では当時、コメの輸入に反対する国会決議が3回にわたって出されていた。交渉は93年8月に発足した細川内閣に引き継がれたが、与党の社会党に加え、野党だった自民党も関税化に反対していた。

 ウルグアイ・ラウンドのジャメイン・ドゥニー市場アクセス分野議長は同12月、特例として6年間のコメ関税化先送りと引き換えに、毎年輸入量が拡大するミニマム・アクセス(最低輸入量)の実施を求める折衷案を提示。羽田孜外相は同月12日にドゥニー氏とスイス・ジュネーブで会談し、6年後に特例措置を延長するかどうか協議する際に「非貿易的関心事項が考慮されること」を求めた。

 「非貿易的関心事項」は農産物を食料安全保障や環境保全の観点から捉えるもので、羽田氏としては特例措置の期限が切れた後に関税化を回避できる選択肢を残す意図があった。関税・貿易一般協定(GATT=ガット)側がこれを受け入れ、細川護熙首相は同14日未明に折衷案の受け入れを表明した。

 細川氏は外交文書の公開に合わせて本紙のインタビューに応じ、「自由貿易で恩恵を受けてきたわが国として、交渉をまとめなければいけないと思っていた。政権が倒れてもやむを得ないというつもりで取り組んだ」と振り返った。

 農林水産省で交渉に携わったキヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、「国内で『関税化反対』というスローガンが先行し、冷静な議論ができなかったのは反省点だ。国内世論の反対が強く、交渉をまとめるにはこの道しかなかった」と指摘している。

 政府はその後、ミニマム・アクセスによるコメの輸入量拡大を抑えるため、99年4月にコメの関税化に踏み切った。

 ◆ウルグアイ・ラウンド=世界貿易機関(WTO)の前身である関税・貿易一般協定(GATT=ガット)が1986年から行った貿易交渉。GATT事務局長は91年12月、「例外なき関税化」を柱とする合意草案を各国に提示していた。

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