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企業の新規株式公開伸び悩む…5年ぶり90社割れ、大型上場目立ち新興・中小は見送り

読売新聞 / 2024年12月26日 23時30分

上場当日に東京証券取引所で行われるセレモニー(16日、東京都中央区で)

 企業の新規株式公開(IPO)が伸び悩んでいる。今年は歴史的な株高を追い風に大型上場が目立ったこともあり、新興企業や中小企業が上場を控えたとみられる。新興市場が低迷しているほか、一般市場よりも上場基準が緩いプロ投資家向けの市場を選ぶ企業が増えていることも要因とみられる。(佐々木拓)

 日本取引所グループ(JPX)によると、国内の証券取引所に今年新規公開した企業は、前年より10社少ない86社で、5年ぶりに90社を下回る見通しだ。

 今年は日経平均株価(225種)が年初から急上昇し、2月にバブル期以来34年ぶりに史上最高値を更新。7月には4万2000円台をつけ、投資家の関心は大型株に向かった。

 株高を背景に、初値の時価総額が1000億円を超えた大型上場は6件に上り、10月に上場した東京メトロは9470億円で今年最大だった。今月18日にプライム市場に上場したキオクシアホールディングスの時価総額は7762億円だった。

 新興企業の多くが上場するグロース市場の新規上場数は64社で、前年とほぼ横ばいだった。しかし、同市場の株価指数は3年前の約5割の水準に低迷している。小規模な企業が多く、投資家の注目が集まりにくいとされ、東京証券取引所の担当者は「十分な資金調達ができないと判断して上場を見送る企業が多かった」と話す。

 東証はグロース市場の魅力を高めるために、時価総額などの上場維持基準の引き上げを検討している。ただ、三井住友DSアセットマネジメントの金子将大氏は「上場維持のプレッシャーを避けようと、IPOを諦める企業が増える可能性がある」と指摘する。

 大型上場が相次ぎ、中小企業が多いスタンダード市場の新規上場数は13社で前年の23社から4割減った。

 IPOが伸び悩むとはいえ、企業にとって上場により資金や人材の確保が見込める。東証のプロ投資家向け市場「東京プロマーケット(TPM)」に今年上場した企業は前年より18社多い50社に達し、8年連続で過去最多を更新した。5年前に比べて約5倍に拡大している。

 TPMは、一般市場で上場の要件となる市場に流通させる株式数や比率といった数値基準がなく、決算短信の四半期開示も任意となっている。企業は少ない負担で知名度や信用力の向上が期待できる。

 今月16日にTPMに上場したハウスメーカー「ハウジング・スタッフ」(松江市)の平儀野好美社長は、「グロース市場は上場維持のハードルが高い」と話す。TPMに上場して投資家向けの広報体制を整える考えだが、市場の売買量が少ないため、いずれ一般市場への上場を目指すという。

 TPMでの売買が少ないことについて、JPXの山道裕己やまじひろみ最高経営責任者は13日の記者会見で「環境をどう改善していくか議論が必要だ。(上場企業の)数ばかり増えることは、必ずしもいいことではない」と話した。

ナスダック目指す日本企業は増加

 一方で、世界最大級の株式市場である米ナスダック市場を目指す日本企業は増えている。ナスダックによれば、くら寿司の米国法人や湘南美容クリニックの運営会社など、日本勢は現在12社が上場する。いずれも2019年以降で、今月11日には暗号資産(仮想通貨)交換業コインチェックグループが上場した。

 上場まで約3年かかるとされる日本に対し、ナスダックでは上場前にそれほど詳細な事業計画を求められないこともあり、半年で上場が認められる場合もある。世界中から投資家が集まり、多額の資金調達も可能だ。

 ただ、弁護士費用など上場に関係するコストは高額だ。上場後に株価が伸び悩み、上場廃止に追い込まれる日本勢も出始めている。

 それでもナスダックに上場する全企業の時価総額を基に算出するナスダック総合指数は過去10年で4倍に増え、日経平均株価の2倍を上回る。人口減少が続く日本を離れ、米国市場を目指す動きは今後も広がる可能性がある。(ニューヨーク支局 小林泰裕)

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