米軍グアム移転 着実に沖縄の負担軽減進めよ
読売新聞 / 2024年12月27日 5時0分
沖縄県には、国内の米軍施設の7割が集中している。その負担を軽減する意義は大きい。米海兵隊の国外移転が動き出したことを歓迎したい。
沖縄に駐留している米海兵隊の米領グアムへの移転が始まった。まず約100人が先遣隊として現地に順次移るという。
米海兵隊の国外移転は、日米両政府が2006年に合意した在日米軍再編の柱だ。計画では約1万9000人の海兵隊員のうち、9000人を国外に移転させる。
当初の移転完了時期は14年を予定していたが、民主党政権下で米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画が迷走し、米軍再編計画は大幅にずれ込んだ。
普天間を県外に移設させる、といった無責任な主張をした当時の失政の影響は重大だ。
陸上、海上を問わず、広範な任務をこなせる米海兵隊が沖縄に駐留していることは、北朝鮮や中国に対する抑止力となってきた。
一方、日米合意の当時と比べ、日本周辺の安全保障環境は悪化している。北朝鮮は核実験を繰り返し実施してきた。中国は急速に軍備を増強し、空母やステルス戦闘機を保有するようになった。
国外移転の完了後も、米海兵隊の司令部や実動部隊の計約1万人は沖縄に残る予定だ。今後も即応態勢を維持し、南西地域の安定に貢献してもらいたい。
山口県岩国市が14年、普天間の空中給油機部隊を受け入れるなど、本土の自治体が沖縄の負担軽減に協力した例はあるが、最近はそうした機運がみられない。政府は、米軍施設のある本土の自治体への働きかけを強めるべきだ。
米軍は現在、世界的な態勢の見直しを進めている。
沖縄の嘉手納基地では、老朽化した旧型のF15戦闘機を順次退役させる代わりに、最新鋭のステルス機F22などをアラスカなどの拠点から巡回させることにした。
F22は「世界最強の戦闘機」とも呼ばれるが、日本政府内では「巡回で抑止力を保てるのか」といった懸念が広がった。日本側の要望を踏まえ、米軍は新型のF15EXの嘉手納への常駐を決めた。
同盟国として互いに胸襟を開いて協議し、防衛態勢に隙が生じないようにすることは大切だ。
日本も自らの防衛力を高める努力を続けねばならない。近年、自衛隊は「防衛の空白地帯」と呼ばれた南西諸島に駐屯地を相次いで開設してきた。在日米軍と実践的な共同訓練を積み重ね、対処能力を強化していくことが重要だ。
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