「レミパン」はこうして生まれた、人気フライパンを作った町工場の挑戦
読売新聞 / 2025年1月6日 5時5分
料理愛好家でシャンソン歌手でもある平野レミさんの名前がついたフライパン「レミパン」。実はこのレミパンを企画したのは新潟県の小さな金属加工会社だ。四半世紀にわたって愛されるレミパンはどうして生まれたのだろうか。
新潟県燕市にある「オダジマ」を訪ねると、社長の小田島智博さん(54)がレミパンの特徴でもある「蓋」の加工の現場を見せてくれた。
コーティング塗装された平らなアルミの板をプレス機にかけ、縁に微妙な丸みをつける。蓋を立てて台所に置いた時に、水滴が落ちないようにするというレミさんのアイデアを形にしたものだ。
「主婦の代表」
「レミさんから『私は主婦の代表だから』とよく言われました。『恥ずかしいものは出せません』ってね」と小田島さんは懐かしそうに話す。
レミさんにフライパンの開発を持ちかけたのは、先代社長で智博さんの父、直人さん(81)だったという。「オダジマ」は、栓抜きや蒸し器、プリンカップなど金属製の調理用雑貨を中心に製造する会社だった。ただ、海外から安い輸入品が入ってきて、雑貨だけでは先行きが厳しいと直人さんは判断していた。
そこで、新機軸として考えたのが、著名人とのコラボレーション企画。それまで、フライパンの蓋は作っていたものの、鍋は作ったことがない。看板になるような商品を作りたい、と知り合いを通じて、レミさんに「理想のフライパンのアイデアはありませんか」と打診したのだという。1999年(平成11年)ごろのことだった。
レミさん側も、従来のフライパンに不満があった。当時の日本製のフライパンは、浅型が主流で、深めのフライパンは海外製の重いものばかり。毎日、使いたくなる軽くて使いやすく、フライパンの蓋が邪魔にならないものがほしかった。「私の願いをかなえてくれる工場がないかなと思っていたから、電話をもらったときに神様が私の願いをかなえてくれた!と思いました」とレミさんは振り返る。
かかった費用は「ベンツ3台分」
しかし、開発過程は「トライ&エラーの連続でした」と智博さん。レミさんからの要望を聞き、直人さんや智博さんが試作品を作って持って行く。それを実際に使ってレミさんが料理を作ってみると、「主婦が使いにくい点」がたくさん出てくる。
鍋を振った時に食材が飛び散らない鍋の内側の角度や、持ち手の厚み……。具体的で細かい注文がついた。それで、再度、試作品を作り直して、という過程を繰り返したという。
「今のように3Dプリンターがないので、金型を一から作り直す必要があった。金型代だけで相当かけました」と智博さん。その総額は、最終的には「ベンツ3台分」ほどになったのだという
レミパンの特徴である蓋には、縁以外にも役立つ仕掛けがある。その一つが、真ん中にある「差し水」をするのに便利な穴だ。ギョーザなどを焼くときにもいちいち蓋をあけずに水をいれることができ、周りに飛び散らない。それも、「穴を開けたいの」「今までにない新しいことをしたい」というレミさんのアイデアから生まれたという。後にオダジマと共同で特許を取得している。
「うちは雑貨屋だったから、あまりフライパンの固定観念がなく、レミさんが納得いくまで言われたことに取り組んだのが良かったのかもしれません」と智博さん。名前貸しレベルの「監修」ではなく、がっちりタッグを組んだ開発だったのだ。
オリジナルレシピブックも
そうしてレミパンは2000年1月に出荷が始まる。レミパン用のオリジナルレシピブックを付けたのも画期的なら、蓋付きで1万円というこれまでの国産フライパンにはなかったような高額で売り出したのも珍しかった。
「その商品で実際にどんな料理をどう作るのかというレシピ本を付けたものは当時、あまり見当たらなかった。それも毎日使ってもらえるようにという思いからなんです」と直人さん。
レミさんがテレビのバラエティー番組などで使ったことで認知度が上がり、実際に使ったユーザーからの評価の高さがギフトとしての需要も生まれた。月産3万個を超えたこともあるベストセラー商品となった。
直人さんは「レミパンを作ったおかげで、我々は『こういうものも作れるんですよ』と外にアピールできるようになった」。
発売から25年たち、レミパンは、デザインを見直した「レミパンプラス」など商品のラインアップも広がり、フライパン部分の製造は外に委託するようになった。ただ、今でも、特徴的な蓋は「オダジマ」が作る。「レミさんが納得いくまで我々にダメだしをしてくれたおかげで、長く愛される商品になったと思います」と智博さんは話している。
この記事に関連するニュース
-
医師が考案した「深睡眠スープ」がスゴい! 朝・昼・夜の簡単アレンジレシピで毎日の睡眠の質を劇的に改善しよう
CREA WEB / 2025年1月4日 17時0分
-
【絶品】大根の優秀レシピ3選~ふろふき大根やブリ大根など!寒い冬の食卓の主役になる
Woman.excite / 2024年12月29日 6時0分
-
ちょうどいい「片手鍋」8選!使いやすいサイズ感で毎日活躍してくれる
fudge.jp / 2024年12月20日 16時0分
-
【食べれば〇〇シリーズレシピ7選】揚げない天丼、包まないいなり寿司…最小限の手間であら不思議、〇〇の味がする傑作レシピ
CREA WEB / 2024年12月20日 11時0分
-
絶品!タレが決め手の【チキン南蛮】フライパンで作れる人気のレシピやチキン以外のアレンジをご紹介!
Woman.excite / 2024年12月13日 6時0分
ランキング
-
1「想像の100倍寒かった」関東から「盛岡」に移住した30代男性の後悔。「娯楽がパチンコか飲み屋しかないのも辛い」
日刊SPA! / 2025年1月7日 8時51分
-
2「運が悪い時期」に取った方がいい行動
PHPオンライン衆知 / 2025年1月7日 11時50分
-
3「いつまで待たせるんだ!」若い女性店員に文句を言う迷惑客は“まさかの人物”だった…こっそり店長に“会社と名前”を教えた結果
日刊SPA! / 2025年1月7日 15時51分
-
4"優しい気遣いさん"すぐキレる人に対処するコツ 相手に「キレることによるメリット」を与えない
東洋経済オンライン / 2025年1月7日 14時0分
-
5ヒカルは年商200億円! ビジネスで成功したYouTuberが上場企業以上に稼いでいるワケ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月7日 9時26分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください