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「盗撮ハンター」、警備員や私服警察かたり各地で現金要求…「300万円払えば被害申告しない」

読売新聞 / 2024年12月27日 15時13分

 福岡市・天神の商業施設で今年9月、警備員や盗撮被害者の父親をかたった男ら2人が、スマートフォンで動画撮影していた男性から「盗撮」の示談金名目で100万円を詐取したとして詐欺容疑で逮捕され、今月20日に有罪判決を受けた。撮影者に「盗撮」と因縁をつけて金をだまし取るこうした手口はSNS上などで「盗撮ハンター」と呼ばれ、被害が相次いでおり、警察当局は警戒を強化している。(相良悠奨、水木智)

 「動画、撮ってますよね」

 9月中旬、福岡市・天神の商業施設のアニメグッズ店に並ぶ商品をスマホで動画撮影していた50歳代男性客に、警備員を名乗る大柄な男が突然声をかけた。

 男は広島市の会社員の男(32)。判決などによると、男は、男性に「盗撮被害を受けた女性が被害届の提出を検討している」などと言い、男の兄で、女性の父を名乗る同市の会社員(34)に電話。兄は男性に「300万円を払えば被害申告をしない」と言って示談金を求め、男性は100万円を手渡した。

 男性はさらに200万円を求められたため警察に相談したところ、兄弟のうそが発覚。2人は詐欺容疑で逮捕、起訴された。同様の手口で40歳代の別の男性からも約17万円を詐取したとして詐欺罪で追起訴された。

 弟の被告は4日に福岡地裁で行われた公判の被告人質問で、経営する会社の経営状態が悪化し、「(犯罪が疑われるなどとして人を取り押さえる動画を流す)私人逮捕系のユーチューブを参考にし、稼ごうと思って人の多い福岡を選んだ」などと説明した。また、事件前には福岡県内にマンションを借りて商業施設で1日中張り込むなどし、「声をかけられそうな人を探していた」と供述。「何もしていない人をだますより、犯罪に近いことをしている人をだます方が罪悪感が薄れる気がした」と述べた。

 福岡県警によると、100万円を詐取された50歳代男性はアニメグッズを撮っていただけだった一方、約17万円をだまし取られた40歳代男性は天神の商業施設で前方を歩いていた女性の後ろ姿を撮影しており、男性は事件後も警察には相談していなかった。捜査関係者は「後ろめたさがあったのでは」とみる。

 福岡地裁は20日の判決で、「被害額は高額で悪質性は高い」として、2人に懲役3年、執行猶予4年を言い渡した。

 「盗撮ハンター」を巡っては、各地で逮捕者が出ている。今月11日には、警視庁万世橋署が、都内の家電量販店で私服警察官を装い男性に「盗撮してたよね」と因縁をつけて約100万円を脅し取ったとして、東京都新宿区の男(30歳代)を恐喝容疑で逮捕した。

 また、ユーチューブ上では駅や街中で、盗撮などの犯人と決めつけ、取り押さえた様子などを流す「私人逮捕系」と呼ばれる動画もあり、中には100万回以上再生を記録する映像も出ている。こうした動画を撮影・アップするユーチューバーの中にも逮捕者が出ている。

 犯罪被害に詳しい上谷さくら弁護士(第一東京弁護士会)は「スマホでどこでも撮影が可能になる中、『映り込んでいる』などと指摘を受ける可能性もあるので撮影場所などには注意が必要」と指摘する。その上で、「盗撮かどうかは判然としない場合もある。金銭を要求された場合は、盗撮をしたかどうかの認識にかかわらず、毅然きぜんと断り警察に通報することも検討してほしい」と話している。

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