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医療従事者や復旧作業員支えた「被災地のホテル」…能登半島地震「あっという間の1年だった」

読売新聞 / 2024年12月28日 12時50分

ホテル前で、慌ただしかった1年を振り返る中島さん(20日、石川県輪島市で)=桐山弘太撮影

 石川県輪島市の朝市通り近くにあるビジネスホテル「ルートイン輪島」は、能登半島地震で従業員らが被災したなか、発生から1週間後に営業再開にこぎ着けた。被災地のホテルとして、医療従事者や復旧作業員といった「エッセンシャルワーカー」の疲れを癒やし続けてきた1年だった。(佐藤彩音)

1月7日に再開、翌日には朝食も

 ホテルは地震で本館が傾いたが、102室を擁する東館は被害を免れた。津波避難ビルに指定され、元日は大津波警報が出るなか、地元住民が身を寄せた。

 停電が1月1日夜に復旧すると、「被災地のホテルとして役に立ちたい」と7日に営業を再開。予約の問い合わせにスタッフはこう回答した。「水は使えませんが、お泊まりいただくことは可能です」

 長野県の本部から飲料水を輸送し、冷蔵庫にあった食材で8日から朝食を出した。初日のメニューは白米、みそ汁、ソーセージ、卵焼き、のり、漬物だった。

 残るは水の復旧だった。道路状況が悪いなか、グループ会社の設備メンテナンス会社社員が駆けつけ、傾いた貯水槽や灯油タンクを元に戻した。約1キロ離れた市の浄水池の水をトラック2台で1日4、5回運び、11日から使えるようになった。運搬は断水が解消する2月中旬まで続いた。

従業員も被災

 温泉を引いた東館1階の男性大浴場は、配管を補修して11日から利用可能にした。食材やタオル、シーツは週に1、2回、従業員が七尾市の系列ホテルに車で取りに行った。中島健太支配人(42)は「ルートインの強みは朝食と温泉。被災地での仕事で疲れた体を癒やしてもらうためにも、いち早い提供は欠かせなかった」と話す。

 客室清掃員や調理スタッフら約50人で毎月約4000人の客を受け入れたが、従業員のなかには自宅が全壊してホテルで寝泊まりする人や、半壊した自宅や避難所から通う人もおり、中島さんは一人一人に話しかけるなどして体調などに注意を払った。「避難所にいると不安になるが、ここで働いていると元の生活に戻れたようでうれしい」と話す人もいた。

心と体、ゆっくり

 被災地で「DMAT(災害派遣医療チーム)」の看護師として活動する上吉原良実さん(44)は再開初日に利用し、現在も定期的に宿泊している。「泊まれるだけでもありがたいのに、温かい料理と温泉があって驚いた。疲弊した心と体をゆっくり休めることができた」と感謝する。

 年末年始も医療従事者や建設関係者らの予約が次々に入る。中島さんは「あっという間の1年だった。お客様から協力をいただきながら、命を守る思いでやってきた」と振り返り、「復興には時間がかかるかもしれないが、被災地のホテルとしての使命を果たしていきたい」と語った。

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