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なり手不足深刻の長野県内の町村議会、議員報酬引き上げ相次ぐ…全国ワースト2位の低水準

読売新聞 / 2025年1月4日 19時1分

 議員のなり手不足を解消しようと、長野県内の町村議会では先月、議員報酬を引き上げる動きが相次いだ。全国比で報酬が低水準なことが背景にある。一方で若者世代の報酬を重点的に引き上げる動きは公平性に疑問符が付いて廃止されるなど、人材確保の取り組みは試行錯誤が続く。専門家は引き上げだけでは効果は不十分だとし、「将来的には、広域での議会運営の議論が必要になる」と指摘する。

 地方議会での報酬は、議長や副議長、常任委員長と、その他議員などで金額が異なることが一般的だ。全国町村議会議長会による調査(2023年7月時点)によると、県内58町村議会の議員報酬の平均額は、特段の議会役職につかない議員を基準として17万6286円。全国平均の21万8218円を大幅に下回り、山梨県(15万9000円)についで47都道府県でワースト2位の低水準だ。自治体別では、売木村12万4000円、栄村12万9000円、平谷村13万5000円など、11町村で15万円未満に抑えられている。

 一方で、なり手不足は深刻さを増すばかりだ。昨年の統一地方選では、27町村議選のうち10町村で無投票で、このうち下條、南牧、大桑、木島平の4村が定数割れとなった。低額な議員報酬が一因になっているとの見方から、全国的に引き上げの議論が進んでいる。

 県内町村の12月議会では、飯綱町が月額報酬で4万6000円増の22万円、佐久穂町が3万3000円増の21万8000円、青木村が6万円増の22万4000円とする条例改正案をいずれも可決した。飯綱町議会では、21年の町議選が、町が誕生した05年以降初めて無投票となり、「残念だった」という住民アンケートなどを踏まえて議論。同時に、定数を1減らして14にした。佐久穂町議会では、「佐久地方の町村議会は、高齢の男性議員が大半を占めるという課題がある。子育て世代、現役世代の議会参画を促すためにも報酬の増額は必要」との意見があがった。

 一方、月額報酬を1万7600円増の21万5600円とする条例改正案が賛成多数で可決された飯島町議会では、若手の立候補を促そうと一部議員によって提出された、子育て世代の報酬額を重点的に引き上げる修正案が、「一律であるのが望ましい」との意見が出て、否決される一幕もあった。生坂村議会でも、55歳以下の議員に限り18万円から30万円に引き上げられていた現行の月額報酬を、一律21万5000円に変更する条例改正案が賛成多数で可決。若手議員の不祥事などもあり、村民へのアンケートでは見直しを求める声が半数を上回ったという。県内では同様の金額設定が、中川村で行われている。

 栄村では、村議会の特別委員会が、月額報酬を6万5500円増の19万4500円に引き上げることを盛り込んだ調査報告書を議長に提出。村の審議会を経て、来年3月定例会で関連条例案が提出される見通しだ。

 多くの町村議会の議員報酬について、東北大の河村和徳准教授(政治学)は、「『地元の名士』と呼ばれたような高所得者たちが議員をしていた時代の名残で低水準になっている」と指摘。一方で、人口減少や企業や公務員の定年延長により、なり手の確保は厳しさを増すとの見方を示し、「報酬の引き上げは短期的な効果しか持ち得ない。将来的には、複数の自治体の議員でつくる広域連合議会の役割を拡大するなど、さらなる活用を検討することも一案だ」と話している。

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