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自衛隊の不祥事 国民の信頼失墜させる愚行だ

読売新聞 / 2024年12月29日 5時0分

 高い規範意識と厳格な統治が求められる自衛隊の様々な部署で、不正が横行していた。国民の信頼を裏切る行為は断じて容認できない。

 自衛隊員の逮捕事実を伏せていた防衛省の閉鎖的な体質も気がかりだ。組織全体の規律を正すことが急務である。

 防衛省が、海上自衛隊の潜水艦の修理契約に絡んで、乗組員が川崎重工業から接待を受けていた問題について、特別防衛監察の中間報告を発表した。

 川重側が接待費に充てるために行っていた下請け企業との架空取引は、2018~23年度の6年間だけでも約17億円に上っていたことがわかった。架空取引は40年近く行われていたという。

 架空取引で捻出した裏金は、乗組員から要望があった炊飯器や冷蔵庫といった備品の購入や、乗組員との飲食に使われていた。

 特別防衛監察では、三菱重工業も海自に、契約にはない備品を納入していたことが判明した。

 自衛隊と防衛産業大手が「癒着」していたら、防衛費の増額に疑いの目が向けられても仕方ない。不正の根絶が不可欠だ。

 防衛省は、安全保障上の機密情報である「特定秘密」に関連した新たな不祥事なども発表した。

 自衛隊員が出向先から戻って特定秘密を扱う場合は、改めて資格を取る必要があるが、それを怠っていた例が約100件あった。特定秘密を巡る不祥事は7月に明らかになったばかりだ。情報保全がずさんすぎる。

 さらに、陸自隊員が、有事の際に自衛隊がとる行動を記した特定秘密文書1件を誤って廃棄していた。隊員は文書を受け取った際、受領を証明する書類を偽造して提出していたこともわかった。

 なぜ書類を偽造したのか。廃棄は本当なのか。防衛省は徹底的に調査する必要がある。

 陸自の警務隊は今年9月、この隊員を有印公文書偽造などの疑いで逮捕した。当時の防衛相には報告していたというが、逮捕の事実は公表しなかった。

 非公表とした判断について、防衛省は「犯罪の組織性が疑われていたためだ」としているが、実態を解明して説明すべきだ。中谷防衛相は、この対応が適切だったかどうか検証してほしい。

 このほか、海自隊員が潜水手当を不正に受給していた問題では、新たに86人を処分した。すでに公表した分と合わせ、処分者は160人に上った。順法精神の欠如には目を覆いたくなる。

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