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「売れない実力派地下アイドル」から1年半 国民民主・玉木氏が語る現在地と「178万円」の行方

J-CASTニュース / 2024年12月28日 12時0分

「売れない実力派地下アイドル」から1年半 国民民主・玉木氏が語る現在地と「178万円」の行方

J-CASTニュースの取材に応じる国民民主党の玉木雄一郎代表(2025年3月3日まで役職停止中)。「103万円の壁」のあり方などについて語った

与党が過半数割れした2024年10月の衆院選では、「手取りを増やす」ことを訴えてきた国民民主党が大幅に議席を伸ばした。直後に玉木雄一郎衆院議員(代表の役職停止中)の不倫スキャンダルが発覚したものの、政党支持率は堅調だ。

当面の焦点は所得税が非課税になる「年収103万円の壁」の行方だ。

与党が12月20日に決定した税制改正大綱では、123万円まで引き上げる方針が明記されたが、国民民主は引き続き178万円への引き上げを求めており、「延長戦」に突入している。12月24日に予定されていた自民、公明、国民民主3党による協議は、自民党の宮沢洋一税調会長の日程を理由に見送られた。

玉木氏はこの日、J-CASTニュースの取材に応じ、この経緯を「絶対『宮沢逃げるな』という風になる」と非難。現時点で国民民主が25年度の本予算案に賛成する可能性は「ゼロ」だとした。予算が通らなければ政権が倒れるとして、宮沢氏について「倒閣運動しているのと同じ」「まるで野党のような振る舞いになっている」などと指摘した。

25年7月に予定される参院選への対応など、今後の取り組みについて2回にわたって幅広く聞いた。(聞き手・構成:J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)

キャスティングボート握る目標を選挙1回分早く達成

―― 衆院選では議席が7議席から28議席へと、大幅に伸びました。勝因をどう分析しますか。「手取りを増やす。」がキーメッセージでした。これが奏功したのでしょうか。

玉木: 3つ要素がありました。1つ目は、主張が明確で「手取りを増やす」と言っていたことです。2つ目が、今まで自民党も立憲民主党も踏み込まなかった、現役世代や若い世代に、ある種ターゲティングしたことです。日本記者クラブで行われた党首討論会では、パネルに「若者をつぶすな」と書きました。今のまま行くと、やはり若い人ばかりに負担がいって、いくら働いてもこの国では恵まれないし報われないということを変えたい、ということを明確に打ち出しました。3つ目は、やはりネット戦略。「戦略」というわけでもありませんが、地上波でほとんど取り上げられない政党だった我々は、ネットに行かざるを得ず、先行者メリットができていたというのが実態だと思います。YouTubeの「たまきチャンネル」も、7年も前に始めていたのが結果として良かった、ということですね。

―― 1本目の動画は18年7月。表参道で「見たことあります?」と街頭インタビューする内容でした。あまり知名度は高くない様子でした。

玉木: 今、同じのをやってみたいね~。実は23年の代表選で掲げた中期政策が、少し前倒しで、全部その通り当たっているんですね(編注: 選挙公報の「基本姿勢」の項目に「大型国政選挙ごとに比例票の2割増=次の衆院選で380万票、 次の参院選で460万票を獲得し、 キャスティングボート(決定権)を握る政治勢力に成長させる」とある。24年衆院選の比例票は617万票)。次の次の衆院選ぐらいまでには、共産党さんや公明党さんを超えるぞ。一言でいうと全国で600万票を超える比例票を取れる存在感のある政党になろう。そうなれば、そのときには必ずキャスティングボートを握れるような政治状況になっていて、私達が政策実現力を高めることができる...ということは、実は23年から訴えていました。それが実現したということですが、誤算だったのは、選挙1回分早く実現したということです。

「売れない『実力派』地下アイドル」だったところに希望があった

―― 「リハック」の番組で、大学生から「売れない実力派地下アイドル」だと指摘されて話題になりました。これが23年5月。1年半の間に急速に支持が拡大したということでしょうか。

玉木: 彼女が言ってくれたのが「売れない地下アイドル」ではなくて「売れない『実力派』地下アイドル」だったところに希望があったんですよね。つまり、当時から大学生、若い人を中心に、「国民民主党や玉木雄一郎さんの政策いいぞ」という、「知る人ぞ知る存在」だったことは間違いありませんでしたし、比較的10~20代の支持は当時から高かった。ネットリテラシーが高くて、我々の政策を積極的に見るような人にとっては、元々響いていたわけです。選挙になると地上波でも取り上げてくれますから、露出も増やしながら議席の大幅増につながっていった、ということです。特に選挙が終わってからの方が、国民民主党の認知度は上がったと思います。「4倍増」になったことで注目されて、「何言ってんだ」と政策をみたら「手取りを増やす」「103万円の壁を引き上げる」と言っていて「いいじゃないか」と......。今回特別に新しいことをやったわけではなく、結党以来同じことを言い続けてきて、多くの国民の皆さんに「見つけていただいた」選挙でした。なので、選挙後は「見つけてくれてありがとう」と言ったんです。

―― AKB48のような大所帯のアイドルグループのメンバーも「私を見つけてくれてありがとう」という言い方をしますね。

玉木: そういう感覚です。日本経済新聞社とテレビ東京の12月20?22日の世論調査では、国民民主党の支持率が14%。立憲が9%で、その1.5倍ぐらい、2桁になっているのは夢のような事態です。我々としてはこれを慢心せずに、止まらずに前に進み続けたいと思っています。その意味では自公には柔軟に、我々国民民主党をはじめとした野党の意見も聞いてもらいたいし、我々も今まで反映されなかった声を政策の形で実現していく責任を負ったと思っています。だからこの「103万円の壁」をめぐる問題は簡単には譲れませんし、178万円を目指して頑張るというのは、変わらぬ方針で貫きたいと思っています。

―― 先ほどの地下アイドルの例え話で言うと、もうメジャーデビューして「地上」に出て、ある程度大きな会場でコンサートをするような感じに......。

玉木: まだまだそんなことはないんですけどね。ここからが勝負だと思いますね。ただ、今回の選挙で特徴的だったのは、1野党が言った政策が、ニュースやワイドショーを通じて、これだけお茶の間を巻き込んで話題になったのは、おそらく初めてだという点です。政治報道といえば「麻生さんと茂木さんが飯食った」みたいな話ばかりで、1票入れても結局変わらない感覚を持たれていましたが、「1票入れたら、ひょっとしたら手取りが増えるかもしれない」「税制が、政策が変わるかもしれない」と、特に若い人に思ってもらったという意味では、非常に意義ある選挙だったと思います。(選挙戦は)「政治とカネ」で一色でしたが、そういうときに正面から経済政策を訴えたところが現役世代に響いたと思っています。

―― 国会審議の風景は変わりましたか。

玉木: 自公だけで物事を決められなくなったのが大きいですよ。我々は「103万」に集中していますが、ちょっと目を転じると、「政策活動費」を廃止する法案が成立しました。最初、自民党は抵抗していましたが、立憲や維新とも一緒に法案を出して成立したわけです。大きな変化です。多様な意見を聞く国会になってきた、というのはプラスに捉えています。

「地価税」発言は「ちょっと誤解与える表現」「不用意な発言」

―― 当面の政策的な焦点は「178万円」だと思います。古川元久代表代行が12月22日のフジテレビの番組で言及した「地価税」は、「党として決めたものではない」とのことですが、財源論として「筋がいい」のでしょうか。

玉木: どうなんでしょうね......。番組では、GAFAへの課税、ECサイトで取引している人が消費税払っていない......。そういう話の中で、然るべきところから税金を取ったらいいのではないか、という文脈で、地価が高騰する中で外国人のマンション投資の影響で日本人のカップルが買えなくなっているみたいな話も出ている。その中で、土地を購入する外国人や外国法人など、何か課税すべきところを課税した方がいいという文脈の中の一例として出したということだと思うのですが、ちょっと誤解を与える表現だったことは間違いありません。そもそも、党で地価税を上げる(凍結を解除する)といったことは全く決めていません。我々はあくまで「手取りを増やす」というのは、減税と、社会保険料の軽減と、そしてガソリン価格をはじめとしたエネルギーコストの低減、この3本柱でやっていく、というのは選挙で通った方針です。そのうちの「103万の壁」を引き上げるのは減税政策としてやっていることで、そもそもインフレで取りすぎた税金をお返ししようということなので、何かを増税してやるという方針はありません。あの文脈の中で少しちょっと乗らされたというか......。不用意な発言だったと思いますけどね。

―― 178万円への引き上げをめぐっては、「7~8兆円」の税収減が繰り返し指摘されています。

玉木: 財務省からは非常に粗い資料をいただきましたが、「試算は相当の幅をもって見る必要」があると書いてあるぐらいなので、あまり7~8兆円を前提に報道されない方がいいと思います。今回、20万円上げましたよね(12月20日に決定した与党税制改正大綱で「年収の壁」が103万円から123万円に引き上げる方針が盛り込まれた)。この減収幅が6000~7000億で済むということになると、(国民民主党としては)大体1万円上げたら国・地方で1000億(の減収)いう計算でやっていましたが、この計算でいくと1万円上げても300億ぐらいしか減収はないので、今、財務省が言っているものについては、3分の1ぐらいの財源で済むことになります。その意味で(178万円に引き上げたとして、減収幅は)2.5兆円ぐらいですよ。(税制改正大綱の20万円引き上げのくだりでは)「特段の財源確保措置を要しないものと整理する」とあります。ということは、2.5兆円のうち0.7兆円は出てくるから、あと1.8兆円分工夫すれば178万円も可能なわけです。24年度は3.8兆円、23年度は2.5兆円税収で上振れしていますし、23年度は7兆円、22年度は11兆円使い残しがあります。1.8兆円ぐらい何とでもなるんじゃないの?ということです。20万円引き上げで「特段の財源確保措置」がいらないのであれば21万や22万でもいらないのでは? 75万円上げるなら必要、と言いますが、その答えはその間にあるでしょう。最近、「140万までだったらできる」「腹案があった」といった噂も出ていますが、そうであれば、もったいぶらずに正直に言ってもらいたいです。

宮沢洋一税調会長は「倒閣運動しているのと同じ」「野党のような振る舞い」

―― その文脈でも、12月24日に予定されていた自民、公明、国民民主の3党による協議が、自民党の宮沢洋一税調会長の日程を理由に見送られたことに憤っている、ということですね。

玉木: 絶対「宮沢逃げるな」という風になるんじゃないですか?

―― 年をまたぐことになりますね。

玉木: うちは別に構わなくて、予算が通らなくなるのは政府与党ですよ?大丈夫なんですか?という気がして、こちらが逆に、すごく心配しています。

―― 12月21日の配信では、「次の攻防は2月末~3月初め」と話していました。もう少し後ろ倒しになる感じでしょうか。

玉木: まずは、衆議院で予算が通るときが大事な局面で、通らなかったら結局年度内に成立しません。予算が通らないと政権倒れますよ。そうなったら石破さんが退陣という話も出てくるから......。宮沢さんはこうやって(協議見送りという形で)反発しますが、結局これは石破さんの倒閣運動しているのと同じですよ。予算を成立させないように。まるで野党のような振る舞いになっていると思いますけどね。

―― このまま協議が進まなければ、国民民主党としても予算案に賛成する可能性は、どんどん低くなりますね。

玉木: 今の時点でゼロだから。

―― 予算が通らないとなれば、石破内閣も厳しいですね。

玉木: 予算成立しなかったら倒れますからね。だから、今一番石破政権の行く末を真剣に考えているのは国民民主党じゃないですか?

―― その文脈で言えば、週刊ポストの最新号(25年1月10日号、首都圏では24年12月23日発売)に「3月に『玉木総理』爆誕」という見出しが躍っていました。大雑把に言えば、石破内閣が立ち行かなくなって玉木代表を担がざるを得なくなる......という筋書きなのですが、ああいう話が出ると、うれしいものですか。

玉木: 私は冷静に見てますけど......。とにかく日本のためにはちゃんと予算を通さなきゃいけないと思っていて、そのためには、それなりの合意形成をしないといけない。いつまでたっても宮沢さん、自公が過半数取っていて、野党の意見なんか蹴飛ばしておけばいいんだよ、みたいな感じがあるのが、ちょっと心配になってきますね。

―― 日本維新の会は、所得制限なしの高校の授業料無償化実現と引き換えに本予算案に賛成するとの見方も出ています。仮にそうなった場合、キャスティングボートが向こうに移ってしまう......といった気持ちはありますか。

玉木: 全然ないです。移ったら移ったで結構です。我々はそういうことではなくて、国民に約束した政策がどれだけ実現するかということだけで判断しているので、もし維新さんが賛成して、うちの178が吹っ飛ぶんだったら、もうそれでも構わないですよ。それもひっくるめて、参院選で国民の皆さんにご判断いただければいいと思っています。我々は政策を天秤にかけられたから曲げるなんてことは一切しません。

(後編に続く。12月29日掲載予定です)


玉木雄一郎さん プロフィール
たまき・ゆういちろう 国民民主党衆院議員。1969年香川県生まれ。東大法学部卒。93年旧大蔵省入省。2009年の衆院選で香川2区から初当選し、現在6期目。旧民進党幹事長代理、旧国民民主党共同代表を経て18年9月から同代表。20年9月に分党を経て新国民民主党設立、代表に就任。

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