解剖研修問題で「献体しない」宣言続出...通常は「献体」どう扱われる? 黙禱や献花、実習室はスマホ厳禁も
J-CASTニュース / 2024年12月29日 11時0分
手術器具(イメージ)
「東京美容外科」の医師・黒田あいみ氏が、グアムでの解剖研修での様子を撮影した写真をブログとインスタグラムに公開し、SNSで批判の声が相次いでいる。さらにはこれを受け、「献体を提供しない」と宣言する声も上がっている。
日本篤志献体協会の理事長・坂井建雄氏は、協会内でも心配の声が上がっているとし、今回の黒田氏の行為について「非常に残念」と話した。
「自分の肉親が解剖されるのを喜ぶ人はいません」
問題となったのは、黒田氏が2024年12月2日に公開したブログだ。解剖が行われるなかで、ピースをした黒田氏が複数の医師とともに写る写真などが添えられていた。インスタグラムでも、「頭部がたくさん並んでるよ」として、モザイクがかかっていたものの献体の頭部がずらりと並んだ写真を公開していた。
SNSでは、倫理観を問う声や批判が相次いだほか、こうした扱いを受けるのであれば「献体を提供しない」との声も相次いだ。
献体は、希望者が医科・歯科の大学または全国の「献体篤志家団体」に申し込み「献体登録」をすることで、死後に解剖実習のため提供されるが、この登録を解除した人はいるのだろうか。日本篤志献体協会の理事長で順天堂大学特任教授の坂井建雄氏は、J-CASTニュースの取材に、協会内でも心配の声が上がっており、把握はできていないが、不安を感じている献体者に対して全国の大学で対応されている可能性があると回答した。
提供された献体は、主に医学・歯学生の解剖実習に役立てられる。現在、年間で約3500体が献体として提供されている。
献体登録を申し込む人について坂井氏は、「医療のお世話になって健康や命を回復できたから、ぜひ医学に恩返ししたい、皆さんそうおっしゃる」と話した。
登録には本人の意思だけではなく、家族の同意が必要だ。坂井氏は、亡くなった後に実際に大学に提供する段取りをするのは家族であり、残された家族の了承が重要だと話す。
献体登録者が亡くなった後、遺骨を遺族のもとに返すまで、2年から3年かかると坂井氏は説明する。献体はホルマリンでの保存処置やアルコールでホルマリンを抜く作業が必要となるほか、解剖自体にも時間がかかるためだ。
「自分の肉親が解剖されるのを喜ぶ人はいません。献体者を大切に思っている家族が、本人の『医療に恩返しをしたいから(献体提供を)大学と約束した』という思いを大切にして(遺体を)預けてくださるんです」
「解剖実習は技術の向上だけではなく、学生や医師の倫理観の教育の場でもある」
献体の扱いについては、「死体解剖保存法」第20条にも定められている。
「死体の解剖を行い、又はその全部若しくは一部を保存する者は、死体の取扱に当つては、特に礼意を失わないように注意しなければならない」
死体解剖保存法には、解剖には遺族への承諾が必要であることのほか、「公衆衛生の向上又は医学の教育若しくは研究のため」という解剖の目的、実行できる人の資格、特別な解剖室で行うことなどが定められているが、坂井氏はこの第20条が最も大切だと話す。資格や場所、目的が法律で限定されているのは、遺族の気持ちを大切にし「礼意を失わない」ことを実現するためでもあると述べる。
19年に順天堂大学の教授を定年退職するまで、医学生の解剖実習に立ち会っていた経験を持つ坂井氏は、解剖実習の前には全員で黙禱を捧げ、献花をたむけていたと説明する。ほかの大学でも通常行っていることだという。また現在は、外科修練の場として献体を用いた実習も行われており、人体の構造を理解することで、精度の高い治療につながっている。この実習に際しても、同様にご遺体に敬意を表して黙禱を捧げ、献花をたむけている。
坂井氏は、解剖実習は技術の向上だけではなく、学生や医師の倫理観の教育の場でもあると説明する。解剖実習室にはスマートフォンの持ち込み禁止を厳命していたとし、「ご遺体を写真に撮って勝手にアップしてはいけない、そういうことをするとどれだけ悩む人がいるか」ということも教えていたと話した。
今回のようにSNSに献体の写真を公開する医師がいたことについて坂井氏は、「非常に残念」と話した。
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