別れを経験したアイドルが一年の終わりに感じること、世界最高峰の舞台で日本人スケーターが見せたもの…清司麗菜の#skatelife
読売新聞 / 2024年12月31日 12時0分
NGT48の清司麗菜さんはスケートボードに打ち込むアイドル。2021年の東京五輪直後から始めたスケートボードがいよいよ仕事に結びついてきました。様々な別れを経験した2024年、彼女にとってはどんな年になったのでしょう。「清司麗菜の#SkateLife~continuity180~」の第27回です。
今年最後のスケボー仕事
今年最後の「スケボー仕事」が終わった。12月22日、新潟県の村上市スケートパークで開かれた「初心者スクール&クリスマスイベント」に先生として参加した。子供から大人まで、50人を超える生徒たちにスケートボードの乗り方を教えたり、サンタクロースのコスプレをしてプレゼントを配ったり……。心の温まるお仕事だったな。
つらいことばかりだったけれど、後から振り返れば――ってことって結構あるよね。私にとって、今年はしんどい年だったような気がしていた。4月には同期の1期生、本間日陽ちゃんが卒業し、ついこの間は、同じく同期の奈良未遥ちゃんも。それぞれ、次のステップを見据えての卒業だから喜ぶべきことなのだけれど、そこにいた⼈がいなくなるっていうのは、つらい。だけど、不思議なことに後から振り返ると、今年はかなり良い年だった。
アイドルにとって一番つらいのは
アイドルの仕事で一番大きかったのは、今年7月の「第6回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」。世界中の48グループのアイドルが歌唱力を競うこの大会で、個人戦で5位に入ることができた。元々、歌には自信があったのだけれど、第1回から3回連続で予選敗退していて、4回目は心が折れて不参加。だけど、同じグループの三村妃乃ちゃんに誘われて、もう一回大会に出ようと決意して、やっと個人戦で結果を残すことができた。
今年8月のシングル「一瞬の花火」では、選抜に入ることもできた。だから、夏から秋にかけては本当にたくさんのフェスやイベントに出演することができた。アイドル人生10年目で、一番忙しかったんじゃないかな。
アイドルにとって、一番つらいのは「忙しいこと」じゃなくて、「ヒマなこと」。仕事がないと不安になって、心がぐーっと沈み込んでしまう。仕事に行って、帰ってきて、SNSを更新して、寝る! シンプルだけど、健康的な毎日だったのかも。応援してくださる皆さんにとっても、充実した一年になっていたら嬉しいな。
後輩が夢を持つことに
今年はスケボーの仕事をたくさんいただいた。6月に全国のスケートボード施設を持つ自治体でつくる「全国スケートボード施設連絡協議会」のアンバサダーに就任してから、大阪や地元・新潟のイベントや大会に出演させてもらうことも増えた。
今年11月の世界最高峰のスケートボード・プロツアー「SLS TOKYO」。この連載の取材で参加するだけでもうれしかったのに、フジテレビさんの事前告知番組にも出させていただいて、大会当日はネット配信のフィールドリポートのお仕事までいただいた。
どの会場でも子どもやスケーターの方に声をかけてもらえるようになってきたし、少しずつスケートボード業界に恩返しができてきているのかな……なんて思ったり。今まで一生懸命頑張ってきて、よかったなぁと心から思う。
事務所のスタッフさんからも「自分が好きでやってきたことが仕事につながっていくことは本当にすごい。後輩たちが夢を持つことにもつながるよ」なんて言ってもらえた。全く意識していなかったけれど、知らず知らずのうちにそういう道ができていたのは、少し誇らしかった。
必要な時間
今では、いろんな人に声をかけてもらえてうれしいのだけれど、スケートボードを始めたばかりの時にはむしろ、「誰にも知られていない」ことが心地よかった。14歳から芸能界に飛び込んだ私は、常に誰かと何かを競っていなければならなかった。
スケートボードを始めたばっかりの頃、パークでは私のことを誰も知らなかった。仕事もなくて、時間ばかりあったからスケボーを滑っているとだんだんと友達が増えていった。アイドルとしてじゃなくてスケーターとしてみんな接してくれた。
もう10年もアイドルをしているけれど、新しい自分を見つけられた気がして、居心地がよくて、ありがたかった。いつだって全力疾走できれば、それに越したことはないのかもしれない。だけれど、私には私の歩幅が必要なんだなってことを実感させられた。たしかに仕事もなくて、将来への不安もあって、なんだかモヤモヤがずっと心の中にあったけれど、今から振り返れば、私にとっては必要な時間だったのだと思う。
だから今、私はどんな人に声をかけられても全力の私で向き合う。それが最高の恩返しだって思えるから。
感動した織田夢海の活躍
12月15日、SLSの年間王者決定戦の「スーパークラウン」がブラジル・サンパウロであった。この大会、女子はライッサ・レアウ選手(ブラジル)が3連覇する歴史的な大会になった。2位はパリ五輪の金メダリスト・吉沢恋選手だった。でも、私がすごく感動したのは3位に入った織田夢海選手の活躍だ。
彼女は2023年のストリート世界選手権の女王。去年は本当に絶好調で、メダルの最有力候補だったのだけれど、パリ五輪予選シリーズの終盤に失速して代表を逃した。東京五輪も同じように代表の有力候補だったから、2大会連続で逃したことになる。
そんな彼女がスーパークラウンで魅せてくれた。ベストトリック4本目で、キラートリックの「キックフリップ・フロントサイドフィーブルグラインド」を決めて、10点満点中「9・4」をマークした。彼女が持っている大会史上最高得点に並ぶ会心のトリック。決めた直後にライッサと抱き合って喜ぶ姿は、仲間との絆を大切にするスケーターカルチャーそのものだった。
直接、織田選手と話したわけではないから、今年、彼女がどんな思いで1年を過ごしてきたのかは分からない。だけれど、普通の人では考えられないほどの悔しさと重圧の中で戦ってきたのだと思う。そんな中、彼女が今年最後の大き舞台で見せたとびきりの笑顔に、なんだか私まで救われるような気持になった。彼女にとって、後から考えればよい年――になっていればいいな、なんて考えている。
よいお年を
2025年はNGT48が結成から10年を迎える年になる。1期生の私もいよいよ10周年。
来年の目標は、大きな会場でコンサートをすること。今までは卒業コンサートとのセットの演目だったけれど、今度は単独で。コンサートは先輩と後輩が結束し、大きく成長できる場所でもある。厳しい道のりかもしれないけれど、その時はグループを引っ張っていける存在でありたい。何もないところから、大きく前進することができた2024年。きっと、やってやれないことはない。
今年は本当にたくさんのみなさんに応援してもらえた1年になった。いつも支えてくださるファンやスケーターのみなさん。そして読者のみなさん。本当にありがとうございました。よいお年を。
プロフィル
清司麗菜(せいじ・れいな)
NGT48の1期生。埼玉県出身。「バイトAKB」として2014年にアイドルのキャリアをスタートさせ、2016年にNGT48に加入。全国スケートボード施設連絡協議会アンバサダー。趣味はスケボーのほか、歌うこと、筋トレ。Instagramは「@reinaseiji」、X(旧Twitter)は「@official_seiji」。
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