カーター元大統領、マンデラ氏らと紛争地や貧困地で積極活動…10月にはハリス氏に郵便投票
読売新聞 / 2024年12月30日 19時24分
【ワシントン=淵上隆悠】29日に死去した米国のジミー・カーター元大統領は、1期4年で終わった現職時代に増して、退任後の民間外交や紛争調停で外交手腕を示した。米大統領退任後にノーベル平和賞を受賞した初の例で、「史上最高の元大統領」とも呼ばれるなど、米大統領経験者として幅広く人道・平和活動分野で足跡を残した。
バイデン米大統領は29日、カーター氏の死去を受けて休暇先の米領バージン諸島で演説し、「米国と世界は卓越した指導者、政治家、人道主義者を失った」と哀悼の意を表した。国葬を首都ワシントンで行う意向も示した。米メディアによると、国葬は来年1月9日にワシントン大聖堂で行われる。トランプ次期大統領は自身のSNSで「哲学的、政治的に意見が全く合わなかった」とした上で、「カーター氏が米国をより良くするために懸命に働いたことには最大の敬意を表したい」と述べた。
カーター氏は海軍士官学校を卒業後、海軍で潜水艦の乗員を務めた。父親の死後、地元に戻って農場経営に転じ、地元ジョージア州の上院議員を経て1971年に州知事となった。
全国的な知名度は低かったが、米政治史最大のスキャンダルともいわれる「ウォーターゲート事件」の直後、76年の大統領選に出馬し、清新さを求める世論の支持を集めて勝利した。
大統領在任中はソ連との緊張緩和や中東和平に取り組んだが、ソ連のアフガニスタン侵攻やイランの米大使館人質事件などで外交姿勢が弱腰に映り、米国内では批判が高まった。支持率は低迷し、再選はならなかった。
持ち前の「人権外交」が結実したのは、退任後だ。非営利団体「カーター・センター」を82年に設立し、積極的に紛争当事者や、米国の敵対国の指導者との対話に臨んだ。
北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)脱退を表明するなど危機が高まる中、94年に訪朝して当時の
歴代米政権が対立したキューバのフィデル・カストロ政権とも対話の糸口を探った。02年には米大統領経験者として初めて革命後のキューバを訪れ、当時のカストロ国家評議会議長と会談した。
同じくノーベル平和賞受賞者である南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領らと07年に政策提言集団「ザ・エルダーズ(長老たち)」を結成し、紛争地や貧困地域で積極的な活動を続けた。
カーター氏は、米大統領経験者として最高齢の100歳を迎えた今年10月、米大統領選に出馬した民主党のカマラ・ハリス副大統領に郵便投票で1票を託した。米メディアによると、「(長生きは)ハリス氏に投票するためだ」と家族に話していたという。
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