能登半島地震で液状化、新潟・寺尾地区で43世帯が転出と回答…「もう戻らない」と去った顔忘れられず
読売新聞 / 2024年12月31日 18時14分
能登半島地震は来月1日で発生から1年を迎える。液状化被害が大きかった新潟市西区の寺尾地区では、被害再発への懸念から地区を出ていく住民も少なくないが、安心して住み続けられる地域を目指して住民自身の手でまちづくりを進めようとする動きもある。(家田晃成)
「このままでは地域がスカスカになってしまう」。同地区に住む梶原宜教さん(78)は、地震発生1年を控えた今月になっても不安を拭えない。
梶原さんは、寺尾地区の自治会などでつくる「坂井輪中学校区まちづくり協議会」の会長。10月には地区住民を代表し、市長に液状化対策工事の早期実施と住民負担の軽減を求める要望書を提出した。
市は現在、液状化対策工事に向けた検討を進めているが、具体的なエリアや工法は定まっておらず、住民負担の程度も見通せない状況だ。
梶原さんは、「方針がまだ出ないことがなおさら不安をあおる。実施までの期間が長くなればなるほど、転出する住民が多くなるかもしれない」と危機感を募らせる。
発災以来、多くの住民が引っ越しのあいさつに訪ねてきた。「会長さん、申し訳ないけど私はもう戻らないよ」。そう言って去っていった人たちの顔が忘れられない。「みんな本当はここにいたいと言っていた。どんな気持ちで出ていったのかを考えると……」と言葉を詰まらせた。
住民の不安を把握してまちづくりに生かそうと、協議会は7~8月にアンケート調査を行った。校区内の7774世帯を対象とし、2757世帯が回答。9月までに結果をとりまとめた。
それによると、96・4%が「今後も住み続ける」と回答し、転出済みか転出予定と答えたのは43世帯にとどまった。
アンケートでは、再び液状化しないか不安を抱える住民が多いことも明らかになった。地震によって生じた不安として、74・5%が「液状化対策」と答えた。
梶原さんは「多くの人がここに残りたい気持ちがあると分かり、本当にうれしかった」と話す一方で、転出済み世帯の多くにはアンケートを配布できなかったことから「実際に地域を離れた住民はもっと多い」とため息をつく。
協議会は、アンケート結果に基づく要望書を市長に提出したほか、自主防災組織向けの研修会を開くなどし、住民の不安解消に向けて取り組んでいる。研修会で見直した避難や避難所運営の方法は来年の防災訓練に反映させるという。
この1年は地区のイベントの大半が中止を余儀なくされたが、来月には、地震での損傷から復旧した自治会館で「復興記念」の餅つき大会を開催し、100人以上が集まる見通しだという。住民たちは復興に向け「地域の輪」を結び直そうとしている。
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