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妻子4人失った42歳の警察官、チャイルドシート見つけ涙止まらず…能登はあの日と同じ晴天だった

読売新聞 / 2025年1月2日 20時38分

妻・はる香さんの実家跡付近に花を手向ける大間圭介さん(1日、石川県珠洲市で)=横山就平撮影

 石川県珠洲市で地震に伴う土砂崩れに遭い、妻子4人を失った警察官の大間圭介さん(42)が1日、地震後初めて現場を訪れた。「ただいま。ありがとう、ごめんね」。同じ時間を過ごしてくれたことへの感謝と、助けられなかったことへの謝罪。一言では言い表せない思いが、せきを切ったようにあふれ出した。

 大間さんは珠洲市仁江町の妻はる香さん(当時38歳)の実家で過ごしていた時に揺れに襲われ、実家は裏山の土砂にのみこまれた。大間さんは屋外にいて無事だったが、はる香さんと長女優香さん(同11歳)、長男泰介君(同9歳)、次男湊介そうすけちゃん(同3歳)は助からず、義父母らを含めて9人が犠牲になった。

 この1年、あの日のことを思い出すのは、苦しい記憶がよみがえりそうで避けてきた。だが「いつまでも背を向けていられない。家族がいるような気がする」と、地震発生1年を機に足を運ぶことを決めた。

 1日午前、親族の男性とともに、はる香さんの実家付近に着いた。あの日と同じ晴天だった。青や白などでそろえた花束を供え、30秒ほど手を合わせた。

 周囲は土砂や倒木に覆われてかなり違う風景になっていたが、子供たちと一緒に駆け上がった坂や、オタマジャクシを捕まえた田んぼの面影は残っており、家族と過ごした楽しい時間を思い出した。

 少し坂を下った辺りに、押し流されてひしゃげたままの一家の車が残されていた。湊介ちゃんが使っていたチャイルドシートを見つけた。家族みんなで車内で歌を歌ったことを思い出し、涙が止まらなくなった。

 外出時やテレビCMなどで家族連れの姿を見ると、「自分にも当たり前にあったものなのに」と塞ぎ込む日々だった。家族の誕生日にケーキを食べたり、結婚記念日に花束を買って帰ったりしたが、その度に一人になったことを実感し、泣くしかなかった。

 一方で、落ち込み続けるのは家族も望まないはずだと思い直し、昨年2月に警察官の仕事に復帰。子供たちが学校のマラソン大会で自己最高順位を更新したことを思い出し、「次はお父さんが頑張らなだめやな」と10月の金沢マラソンに出場、完走した。家族のモットーだった「目標を持ち、頑張ればできる」を達成し、「『お父さん格好良かった』って言ってくれていたらうれしい」と笑顔もみせた。

 たった1年で気持ちに区切りがついたとは言えないが、「残りの人生、家族の分までやりたかったことをしてあげたい。毎日を無駄にせず生きていく」との思いが強くなっている。

 1日、大間さんは「少しだけ、気持ちが楽になったかな」と現地を訪れた感想を話した。珠洲から金沢市の自宅に戻り、「今年はみんなで色んな所に行こうね」と家族の写真に話しかけた。はる香さんが好きだったカフェ巡り、子供たちが好きそうな映画の観賞、楽しみにしていた韓国旅行。みんながしたかったことを「一緒に」する1年にしたいと思っている。(金沢支局 石川泰平)

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