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危うさ増す世界 二つの戦争どう終わらせるか

読売新聞 / 2025年1月3日 5時0分

◆米国を国際協調につなぎとめよ◆

 まもなく米国でトランプ政権が発足する。4年ぶりに米大統領に復帰するトランプ氏の動向が、世界の行方を大きく左右する。「トランプ時代」再到来である。

 1期目と同じように「米国第一主義」を掲げ、実践しようとしている。早くも主要輸入元のメキシコとカナダに25%の関税をかける考えを示し、波紋を広げた。

◆「自国第一」再到来

 目先のディール(取引)で得られる実利を優先し、国際協調や自由貿易がもたらす米国の長期的な利益を度外視した判断も下す。この傾向は基本的に変わらない。

 だが、世界は変わった。しかもトランプ氏が政権を退いた4年前に比べ、より危険になった。

 ウクライナと中東の二つの戦争が長期化し、多大な人命が失われている。中国との競争は激化し、ロシアや北朝鮮、イランは核の脅しを強めている。

 人工知能(AI)を駆使した有害情報がSNSを通じて拡散し、各国の政治体制や選挙を脅かしている。

 トランプ氏が超大国の力をどう行使するか、あるいは手を引くかによって、今後何十年にわたって世界に深刻な影響が出る可能性が高い。

 新たな米連邦議会は上下両院とも共和党が多数を占める。有利な政治状況を内政だけでなく、外交課題の解決にも生かすべきだ。

 喫緊の課題は、ロシアによるウクライナ侵略と、パレスチナ自治区ガザをめぐる戦闘をいかに終わらせるかである。

 トランプ氏は戦費のかさむ戦争には否定的な立場で、かねて戦争を終わらせることが優先課題だと主張してきた。ウクライナの停戦に向け、ロシアのプーチン大統領との直接交渉にも意欲を示している。問題はその中身である。

 侵略を始めたプーチン氏に譲歩すれば、トランプ氏や米国の威信が傷つくだけでなく、法の支配に基づく秩序は崩れてしまう。

 一方、北朝鮮が派遣した兵士を投入してまで戦闘を続けるプーチン氏が、ウクライナが求める北大西洋条約機構(NATO)加盟や、多国籍軍による停戦監視を容認するとは考えにくい。

 損害が大きく割に合わない勝利を、古代ギリシャの故事から「ピュロスの勝利」という。将来の危険を根本から除去しようとすれば犠牲は増える。だが、現在の犠牲を減らすことを優先して和平で妥協すれば、将来に火種を残す。

 戦争の終わらせ方を真剣に模索すべき時だ。米国や欧州の取り組みを関係国が後押しし、より安全で安定した世界の実現につながる合意をめざさねばならない。

◆妥協点どこに見いだす

 中東では、イスラエルがイスラム主義組織ハマスを将来の危険とみなして殲滅せんめつにこだわり、死者は4万5000人を超えている。戦闘の停止が急務だ。

 トランプ氏は親イスラエルの立場が際立つが、政権内にはウクライナや中東より、中国に注力すべきだとの考え方がある。

 米中競合の主戦場は、当面、関税など経済が中心になるとみられる。中国の習近平政権は、トランプ政権からの圧力に備え、新興・途上国「グローバル・サウス」の大国インドや、日本などとの関係改善に動き始めた。

 他方で習政権は、台湾周辺や南シナ海で威圧的な振る舞いをやめるつもりはない。軍事的な緊張が高まる恐れがある。

 いずれにせよ、欧州、中東、アジアの3正面の脅威に、米国一国で向き合うことはできない。

 できるだけ多くの国が協力して国際社会における規範を堅持し、強権的な勢力の挑戦に対抗していくことが欠かせない。日米豪インドなど少数の国々による「ミニラテラル」を多層的に組み合わせることも有効だろう。

 気がかりなのは、欧州の要となる英国、ドイツ、フランスなどで現政権への批判が強まり、体制が揺らいでいることだ。

◆3正面の脅威

 ドイツの2月の総選挙やフランスの次期大統領選で、欧州連合(EU)に否定的なポピュリズム政党が伸長したり、政権を獲得したりする可能性がある。そうなれば米欧同盟は機能不全に陥る。

 韓国では、尹錫悦大統領が戒厳令宣布を巡って弾劾だんがい訴追され、逮捕状まで出された。日韓や日米韓の協力の停滞は避けられない。

 日本が果たすべき役割は一段と重要性を増している。米欧との連携とともに、長年の支援を通じて培ったグローバル・サウスとの関係を深め、国際協調の輪を広げていくことが強く求められる。

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