パレスチナの7歳児が地雷を踏んで爆死…村隣接のイスラエル軍事訓練地帯、標識も柵もなし
読売新聞 / 2025年1月3日 17時19分
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のベツレヘム近郊の村で昨年12月、7歳の男児が地雷を踏み、亡くなった。村周辺は長年、イスラエル軍の軍事訓練地帯に指定されており、村で7人目の地雷による犠牲者となった。村は、自治政府やイスラエル政府に地雷の撤去を求めているが、一向に進んでいない。(パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ラシャイダ村 福島利之)
昨年12月21日朝9時頃、ベツレヘム近郊のラシャイダ村で羊飼いのヤセル・ラシャイダさん(36)が家の裏山で羊を放牧していると、数百メートル離れた谷から爆音が響き、砂ぼこりが舞い上がった。息子と娘は見えるが、もう1人の息子のムハンマド君(7)の姿が見えない。
「ムハンマドはどこだ」。ヤセルさんが叫ぶと、2人の子は泣き叫ぶばかり。駆け寄ると、ムハンマド君の体はバラバラになって地面に飛び散っていた。ヤセルさんは「こんな小さいのに殉教者として天国に召されてしまった」と沈んだ表情で語った。
人口約1500人の村は牧畜とイスラエルへの出稼ぎで生計を立ててきた。1967年の第3次中東戦争で、村に隣接する約8平方キロ・メートルの土地は軍事訓練地としてイスラエルに占領された。以来、イスラエル軍は実弾の発射訓練を行い、多数の地雷を埋めた。今でも訓練地として使われている。
周囲に地雷への注意を促す標識や柵はなく、村人は羊の放牧で出入りする。村では2000年以降、地雷でムハンマド君を含め7人が死亡、20人が負傷した。民間団体「パレスチナ人権センター」によると、1967年以降、西岸では約250人が地雷で死亡している。
村は、自治政府を通してイスラエル政府に地雷の撤去を求めているが、「軍事訓練地だ」として応じないという。パレスチナ自治区ガザで2023年10月に戦闘が始まった後は、イスラエル政府に接触できない状態という。
村は4か所のイスラエル人入植地に囲まれており、村人たちは「入植者が我々の土地を取り上げるため、わざと地雷を撤去しないのではないか」と疑う。村評議会のファワズ・ラシャイダ元議長(58)は「イスラエルの占領が続く限り悲劇は終わらない」と嘆いた。
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