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医師の偏在対策 実効性ある開業規制が要る

読売新聞 / 2025年1月4日 5時0分

 都市部に医師が集中しているのに、多くの地方が医師不足に陥っている状況が一向に解消されずにいるのは問題だ。

 診療所が多い地域での開業に一定の規制を設けるのは選択肢となるだろう。

 厚生労働省が、人口や医師数、高齢化による医療ニーズなどを踏まえて医師の充足度を地域別に数値化したところ、東京の都心部は、医師不足に悩む岩手沿岸部に比べて7倍に上った。

 全国の医師数は34万人余りと、過去10年で4万人増えたが、偏在は深刻だ。病院の勤務医が足りない一方、都会の開業医は余っている、という指摘もある。

 政府は、医師の偏在を是正するための対策をまとめた。通常国会で法改正し、2026年度からの実施を目指している。

 対策の柱は、医師不足の地域で働く医師の手当増額や、医師を派遣する医療機関への経済的な支援を強化するとともに、都市部での開業規制を導入することだ。

 具体的には、診療所が多い地域で新たに開業する医師に対し、訪問診療や夜間・休日の救急対応など、その地域に不足している診療分野を手がけるよう、都道府県が要請できる仕組みを設ける。

 要請に応じない場合、医療機関名の公表や、保険診療を行うために必要な「保険医療機関」への指定期間を短縮することができるようにするという。

 住んでいる地域によって必要な医療が受けられないような事態は避けなければならない。医師にも働く場を選択する自由があるとはいえ、その社会的責任の重さを考えれば、一定の開業規制を設けるのは理解できる。

 対策を議論した有識者会議では、医師が要請に応じない場合は保険医療機関への指定を許可しない、といった厳しい措置も一時検討されていた。だが、日本医師会が「職業選択の自由」などを理由に反発したため、見送られた。

 政府はこれまで、医師の偏在解消に向けて様々な対策を講じてきたが、効果が上がっているとは言い難い。今回の規制も実効性に乏しかった場合には、さらなる措置に踏み切るべきだろう。

 誰もが一度は地方勤務を経験するような仕組みも含めて、多角的な対策が必要ではないか。

 医師の偏在を巡っては、外科や救急など時間外勤務が多い分野のなり手が不足している問題もあるが、十分な解決策は示されなかった。診療科の偏在解消にも引き続き取り組まねばならない。

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