レゲエにロック・ヒップホップ、音楽聴かせて焼酎熟成…奄美の女性杜氏「ジャンルによって味や香りに違い」
読売新聞 / 2025年1月4日 16時12分
「レゲエ」「ロック」「島唄」――。鹿児島県奄美市の黒糖焼酎メーカー「西平酒造」は、音楽を聴かせて焼酎を熟成させる「ソニック エイジング」に挑戦している。「音楽のジャンルによって味、香り、舌触りがそれぞれ違うんです」。4代目社長で
蔵には4合瓶(720ミリ・リットル)600本分の焼酎が入った
音による振動で樽の中の焼酎が揺れる。この微妙な揺れの違いで樽に触れる面積が変わり、風味や色の付き方などに変化をもたらす――。これが西平さんらが取り組む「ソニック エイジング」の仕組みだ。耳を樽に近づけないと音は聞こえず、互いに振動の影響を受けないように設計されている。
西平さんは昭和音楽大学(神奈川県)を卒業後、東京で音楽活動を続けていた。だが、父が体調を崩したことを機に2014年に帰郷。焼酎造りを学び、17年に杜氏、21年に4代目社長に就いた。
焼酎の消費が伸び悩むなか、新たな需要を開拓する必要性を感じていた。そんな時、焼酎が縁で奄美に移住した外国人スタッフの「海外には音楽を聴かせて熟成させたウイスキーがある」「いろいろな音楽を聴かせた焼酎で『飲み比べ』ができたら」という言葉が背中を押した。「大好きな音楽を焼酎に聴かせて育ててみよう」と決め、準備期間を経て23年11月、チャレンジをスタートさせた。
1年あまりの熟成期間を経た今、試飲で効果を実感している。口に含んだ時の刺激や舌触り、飲み込んだ時の感触など、聴かせた音楽それぞれに個性を感じるという。「レゲエはまろやかな味。ロックは酸味を感じて刺激が強い。島唄は優しい味と香り。飲み比べて自分の好みを見つけてほしい」と話す。
計画は順調に進み、当初の想定よりも1年半ほど前倒しして3月、クラウドファンディング(CF)のサイトで先行販売(期間限定)する予定だ。5月頃には一般向けの販売にこぎつけたいという。
海外展開を見据えるほか、音楽のジャンルを増やしたり、熟成期間を延ばしたりする構想も温める。「樽ごと買い取って好きな音楽で育ててもらったり、協力してくれるアーティストの曲を聴かせたりもしてみたい。自然の音や落語などではどう反応するのだろう」。焼酎と音が織りなす無限の可能性に夢が膨らむ。(園田隆一)
◆黒糖焼酎=サトウキビを加工した黒糖の甘い香りとすっきりとした飲み口が特徴。1953年の奄美群島の日本復帰とともに、群島内に限り黒糖を使った焼酎の製造が認められた。現在は5島に計25の蔵がある。
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