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USスチール 日米関係に禍根残す買収阻止

読売新聞 / 2025年1月5日 5時0分

 同盟国である日本の企業による買収計画を、米国の大統領が権限を行使して阻止するという極めて異例の事態である。日米関係に禍根を残す容認しがたい判断だ。

 バイデン米大統領は、日本製鉄による鉄鋼大手USスチールの買収計画について、禁止命令を出した。声明で「国内で所有・運営される強固な鉄鋼産業は、国家安全保障に不可欠だ」と説明した。

 こうした禁止命令は、これまで中国企業が対象となることが多く日本企業は初めてだという。

 米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)の審査の過程では、買収を認めれば米国内の鉄鋼生産量が減少し、安保上、重要な産業へ供給が不足する可能性があるとの見解が示されたとされる。

 だが、安保上のリスクを巡り委員間で合意に至らず、最終判断はバイデン氏に委ねられていた。

 バイデン氏は安保リスクを命令の根拠にするものの、実際は選挙の支持基盤である全米鉄鋼労働組合が、雇用不安を理由に強く反対しているのが大きいのだろう。

 戦後、ともに協力しながら発展してきた日米関係の重要性を十分に顧みないままに、最終判断に至ったことはあまりにも残念だ。

 「米国第一」を掲げ、保護主義的な関税政策を推進しようとするトランプ次期大統領も買収計画に反対してきた。バイデン氏までが保護主義に傾く内向き姿勢とは。事態を憂慮せざるを得ない。

 1901年創業のUSスチールは、かつて世界最大の鉄鋼メーカーであり、米製造業を象徴する「名門企業」だ。外資の傘下に入ることは、国民の間に抵抗感が強いとも指摘されてきた。

 しかし、今では国際競争力を落としており、粗鋼生産量は世界で20位以下に沈んでいる。

 日本製鉄の先端技術や資金の活用で、生産基盤を強化しなければ立ちゆかないのが実情だ。このままでは工場の閉鎖やリストラが避けられないとの見方は強い。

 中国の鉄鋼メーカーが安価な製品の輸出攻勢をかける中で、日米の製造業を代表する企業が連携し、対抗する象徴的な枠組みになり得ただけに、損失は大きい。

 日本は米国への直接投資残高が2023年まで5年連続首位で、米経済の発展に貢献してきた。理不尽な決定は、対米投資にも悪影響を及ぼすのではないか。

 日本政府は、今回の判断に対する具体的な説明を米政府側に求めるとともに、あらゆる打開策を探っていってもらいたい。

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